スギ花粉等を含むいわゆる健康食品について (Ver.090128)

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1.はじめに

     

 最近、花粉症の症状緩和や治療を暗示したスギやヒノキの花粉加工食品が販売されています。2007年2月、スギ花粉加工食品を飲用した女性が、アナフィラキシーショック (死に至ることもある、重篤なアレルギー反応) を起こした問題がありましたが、現状では当該製品のみならず、類似製品が、液体、カプセル剤、錠剤、粉末剤、飴など、様々な形態で多数販売されています。このような製品を安易に使用すると類似した健康被害が発生するおそれがあります。いわゆる健康食品 (以下、健康食品と記載) は、あくまでも日常の食事の補助的なものであり、病気の治療に用いるものではありません。以下に、花粉症対策や健康食品の利用に関する注意点をまとめてみました。


2.減感作療法(抗原特異的免疫療法)とは (1) (2) (3) (4) (5) (7)

 花粉加工食品の多くは、「減感作療法」の効果をうたっています。しかし、これらの食品の宣伝としてうたわれている減感作療法は、実際に医療行為として行われている減感作療法とはその内容が大分異なります。本来、減感作療法は、不測の事態にも対応できるように医師の管理下で行われるものです。では医療行為としての減感作療法とは、どういったものなのでしょうか。

 減感作療法とは、抗原特異的免疫療法とも呼ばれ、アレルギーの原因物質(抗原、アレルゲン)である花粉を少しずつ体内に入れて身体を慣れさせることで、過剰なアレルギー反応を抑えることを目的とする治療法です。減感作療法では、アレルゲンの量を厳密に調整した標準化エキスを使用し、その使用量もアナフィラキシーを誘発しないように慎重に定める必要があることから、減感作療法に熟練した医師のもとで行うのが原則です。アレルゲンを直接体内に入れるため、副作用として、注射部位の腫れ、全身の発赤、喘鳴、アナフィラキシーのリスクがあり、万一の場合適切な対応が必要となるため、注射後30分程度は医師の管理下にとどまるようにします。

 具体的には、まず、血液検査や皮内テストでアレルギーの原因を確かめます。そのうえで、非常に薄く希釈したアレルゲンエキスを少量から注射していきます。はじめは週1-2回の頻度で注射し、その後少しずつ濃度を上げて注射し、適当な濃度になったら間隔をあけて2週間に1回を2ヶ月間続け、その後、1ヶ月に1回の注射となります。効果が出るまでに約3ヶ月はかかり、効果を維持するために少なくとも2-3年継続する必要があります。
 治療をやめた後でも、効果が持続するのがこの治療法の特徴で、2年以上続けた人の約60〜70%で効果が持続するといわれています。
 一方、注射や長期間の通院が不要な舌下方式の減感作療法が最近注目されています。負担が軽いことからメディアなどでも大きく取り上げられていますが、現在実施できる医療機関は限られており、実用化に向けて検証が行われているところです。

 要点をまとめると、医療行為としての減感作療法は、以下の点がポイントになります。
健康食品の宣伝でうたわれている減感作療法とは大きく異なります。

・減感作療法の専門的なトレーニングを受けた医師が行う。
・主に皮下注射にて行う。
・使用するエキスは、濃度を厳密に調整した標準化製剤を用いる。
・開始前に必ず血液検査や皮内テストで、アレルゲンの検索を行う。
・副作用が生じた際に備え、適切な処置ができる施設で行う。


3.花粉症のセルフケア (4) (5) (6)

 花粉症対策として出来るセルフケアには、次のようなものがあります。
●花粉をつけない
・外出時にマスクやメガネをする。
 マスクは花粉の飛散が多いときには吸い込む花粉を約1/3-1/6に減らします。
 メガネは目に入る花粉を1/2-1/3まで減らすことが出来ます。
・表面がすべすべした素材の洋服を着用する。
・帽子を着用する。
●ついた花粉を落とす
・帰宅したら、手洗い、うがい、洗顔をする。
●免疫力を高める
・睡眠を十分とる
・規則正しい生活を心がける。
・バランスのとれた食事を摂取する。
・お酒の飲みすぎに気をつける。
・タバコを控える (鼻の粘膜を正常に保つ) 。

 花粉症についての詳しい情報は、厚生労働省HP「花粉症特集」に公開されていますので、参考にしてください。


4.健康食品利用の際の注意点

 健康食品の利用にあたっては、基本的な考え方を当サイトでも紹介していますので参照してください。

・利用の目的
 健康食品を疾病治療の目的で利用すべきではありません。健康食品はあくまでも食品であり、医薬品とは異なります。病気の時は、かかりつけの医師の診察を受けましょう。医療従事者の管理下で行われる治療においては、健康被害の発生の有無が想定され、適切な処置を受けることができます。しかし同様のことを消費者が自己判断で行うと、健康被害の想定やその対処方法が分からず、重大な健康被害につながる可能性があります。健康食品の利用は、あくまでも必要な栄養素の補給・補完を目的とするようにしましょう。

・科学的根拠の重要性
 「○○に効果がある」「○%の人が改善効果を体験」などといった体験談を宣伝して商品を販売している例が多数ありますが、体験談はその人だけが言っていることであり、他の多くの人に当てはまるとはいえず、信頼できる情報とはいえません。また、病気の治療や治癒の表示が直接されていなくても、そのような効果を暗示しているものは、消費者自身が起こりうる健康被害を十分に認識して対応する必要があります。
 さらに、「天然」「自然」「化学物質を一切含みません」などの表示で安心感を与えようとする表現も使用されますが、天然だからといって全てが安全とは限りません。
 このような宣伝広告が本当のことを言っているのか一見して判断することは難しいものです。「虚偽誇大広告にだまされない方法」(PDF)に、よくあるうたい文句が紹介されていますので参考にしてください。
 健康食品の利用の判断には、科学的根拠の有無が重要です。上記のような宣伝広告のみで判断せず、充分な科学的根拠があるのかどうかを確認し、摂取する必要性があるかを冷静に判断してください。

・製品の品質の重要性
 健康食品として流通しているものには、製品の規格・基準のないものが多数存在しています。同じメーカーの製品でも、その含有成分が全て均一かどうかは分かりません。成分表示のないもの、成分表示はあっても、肝心の成分の含量が記載されていないものなどが多く出回っています。これまでに使用経験があった製品でも、健康被害が起こる可能性を認識する必要があります。


5.食品とアレルギー(8)(9)

 アレルギーには食物によって起こる「食物アレルギー」もあります。国では、食物アレルギーの患者を中心とした消費者の健康被害防止のために、アレルギー表示制度を設け、アレルギー物質を含む加工食品について、それを含む旨の表示を義務付けています。
現時点では、アレルギーや重篤な症状を引き起こしやすい25品目の原材料が、「特定原材料」および「特定原材料に準ずるもの」として規定されています。


 このような表示を活用し、アレルゲンを摂取しないように注意するのが、消費者が自己判断で行うアレルギーへの対処方法です。したがって、花粉症の人がアレルゲンである花粉が含まれる製品を摂取することは、冷静に考えれば、矛盾していることが分かります。
 食品のアレルギー表示制度については、東京都福祉保健局消費者庁国立健康・栄養研究所サイトをご覧ください。


6.アレルギーの治療や治癒を暗示した健康食品の利用による健康被害事例

1) 小児期より重度のアトピー性皮膚炎に罹患していた25歳男性。アトピー性皮膚炎に対する効果を期待し、n-3系不飽和脂肪酸含有栄養補助食品を1日30 g摂取し始めたが効果は明らかでなく、約1年後、顔面・体幹の紅斑が重症化した。5ヶ月後、栄養補助食品の摂取を中止したところ、4〜5日で湿潤紅斑は乾燥・消失した(10)
2) 17歳男性。アトピー性皮膚炎の治療のためクロレラ錠剤およびクロレラエキスを購入し、内服を開始したところ、1週間後より皮疹の悪化を認め、肝機能障害を伴ったアトピー性皮膚炎の悪化と診断された (11)
3) 16歳男性。アトピー性皮膚炎の治癒目的で、紫雲膏、尊馬油、プロポリスなどの外用とプロポリスの内服をし、症状が悪化した (12)

(Ver.090128)



参考文献

(1) 鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症―2005年版(改訂第5版)ライフサイエンス 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会作成
(2) 2005年版鼻アレルギー診療ガイドラインダイジェスト ライフサイエンス 馬場廣太郎 監修
(3) アレルギー性鼻炎ガイド ライフサイエンス 馬場廣太郎 監修
(4) 的確な花粉症の治療のために 大久保公裕 監修
(5) 厚生労働省ホームページ はじめに〜花粉症の疫学と治療そしてセルフケア〜 大久保公裕 (2007.3.19現在)
(6) 厚生労働省ホームページ 花粉症Q&A集 (2007.3.19現在)
(7) メルクマニュアル第17版 日本語版 福島雅典 総監修
(8) 改訂 食品表示Q&A -制度の概要と実務に役立つ事例- 中央法規 食品表示研究会 編集
(10) 小児科臨床.54.48-50.2001
(11) 臨床皮膚科.51.1109-1112.1997
(12) 皮膚病診療.26.983-986.2004
(9) 東京都福祉保健局ホームページ 食品のアレルギー表示制度