注意!(1) データの無断転用,引用、商用目的の利用は厳禁.(2) 以下の情報は現時点(最終更新日時)で調査できた素材の科学論文情報です. 実際に販売されている商品に以下の素材が含まれているとしても,その安全性・有効性がここに紹介した情報と一致するわけではありません.(3) 詳細情報として試験管内・動物実験の情報も掲載してありますが,この情報をヒトに直接当てはめることはできません.有効性については,ヒトを対象とした研究情報が重要です.(4) 医療機関を受診している方は,健康食品を摂取する際に医師へ相談することが大切です.「健康食品」を利用してもし体調に異常を感じたときは、直ぐに摂取を中止して医療機関を受診し,最寄りの保健所にもご相談下さい.
項 目
内 容
名称
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート) [英]St. John's wort [学名]Hypericum perforatum L. オトギリソウ科[オトギリソウ属]
概要
セイヨウオトギリソウはヨーロッパ原産で、アジア、北アフリカに分布する多年草で30-90cmの高さになる。セイヨウオトギリソウの中国語名は「貫葉連翹」である。俗に「うつ状態を改善する」などといわれて、軽度のうつ状態に対しては、一部にヒトでの有効性が示唆されている。ドイツのコミッションE(ドイツの薬用植物の評価委員会)は、うつ状態に対する使用を承認している。安全性については、光過敏症や睡眠障害、胃腸の不調などの悪影響、および様々な医薬品との相互作用があるため、使用には注意が必要とされている。妊娠中・授乳中の経口摂取は、危険性が示唆されていることから避けるべきである。その他、詳細については、「すべての情報を表示」を参照。
法規・制度
別名としてセントジョーンズワート/ヒペリクムソウがある。全草は「医薬品的効果効能を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)」に区分される (30) 。
成分の特性・品質
主な成分・性質
セイヨウオトギリソウの有効成分はいくつか分離されており、特に良く調べられているのはヒペリシン(hypericin)とヒペリフォリン(hyperforin)である。他にアドヒペリフォリン(adhyperforin)、シュードヒペリシン(pseudohypericin)、フラボノール類、フラバノール類、テルペン類、精油、タンニン、ニコチン酸、ビタミンCおよびAなど。 ・セイヨウオトギリソウを含む様々な健康食品40種(カプセル状14種、タブレット状8種、エキス・チンキ状6種、ティーバッグ状6種及び刻み状6種)のヒペリシン及びヒペルフォリン含量を検討したところ、ヒペリシン、ヒペルフォリン共に検出されなかったものが3製品あり、その他ではヒペリシンが0.001-0.192%、ヒペルフォリンが0.001-2.256%と含量にばらつきがあった。また、成分含量が表示されている製品は6種あったが、そのいずれも実際の含量とは異なっていたという報告がある(2006184712)。
分析法
ヒペリシン(hypericin)の定量は、蛍光検出器(励起波長470nm、蛍光波長590nm)を装着した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により分析されている(PMID:8646329)(PMID: 10202973)。
有効性
ヒ ト で の 評 価
循環器・呼吸器
調べた文献の中で見当らない。
消化系・肝臓
糖尿病・内分泌
生殖・泌尿器
・更年期症状のある閉経後の女性100名(試験群50名、51.9±4.3歳)を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、セントジョーンズワート900mg/日とチェストツリー1,000mg/日を16週間摂取させたところ、ほてりやその他の更年期症状、生活の質(QOL)に効果は認められなかったという報告がある(PMID:18791483)。
脳・神経・感覚器
・抽出物は、軽症あるいは中等症の抑うつに対してはおそらく有効と思われる(64)(25)(PMID:12153829)。ただし、重症の抑うつに対しては有効ではない(64)。抑うつに関しては、有効成分ヒペリシンが標準化された抽出物は、三環系抗うつ剤や、プロザックのような選択性セロトニン再取り込み阻害剤(SSRIs)と同様に、臨床試験においてプラセボと比較して有意な効果がある可能性がある(64)。大部分のヒト臨床試験はヒペリシン含有量が0.3%に標準化された抽出物、とくにLI160(Lichtwer社)について実施されている。ヒペリフォリンが標準化された抽出物でも有効だと思われる。ほとんどの試験は成人で行われたが、12歳以下の小児の抑うつに対しても有効であるという証拠が複数ある。よくデザインされた1件のヒト研究の結果、セイヨウオトギリソウの抑うつへの有効性について疑問が投げかけられたが、圧倒的多数の研究は多くの患者に対し有効であることを示している。 ・質の異なる複数の無作為割付臨床試験(RCT)を統合した1件のシステマティック・レビューによれば、セイヨウオトギリソウは軽症ないし中等度のうつ病に対する有効性の高い治療であることが見出された(25)。 ・2007年7月までを対象に、7種のデータベースで検索できた二重盲検無作為化プラセボ比較試験29報について検討したシステマティックレビューにおいて、セイヨウオトギリソウの摂取は抑うつ症状の改善に寄与する可能性が認められたという報告がある(PMID:18843608)。 ・軽度うつ病の患者73名 (48.1±15.0歳、試験群26名、アメリカ) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、セイヨウオトギリソウ810 mg/日を12週間摂取させたところ、うつ症状や生活の質、幸福感等の改善に効果は認められなかったという報告がある (PMID:21632064) 。 ・不安症に対し、有効性が示唆されている。ヒペリシンが標準化された抽出物は、不安症の自覚症状と測定診断値を軽減すると思われる。しかし、セイヨウオトギリソウによる不安の増大もまた、生じる可能性がある(64)。 ・不安神経症を併発している大うつ病性障害の患者28名(18-65歳)を対象とした二重盲検クロスオーバー無作為化プラセボ比較試験において、セイヨウオトギリソウ(花頂抽出物1.8g)とカバ(根茎の水溶抽出物2.66g)もしくはプラセボを1日3回、4週間摂取させたところ、被検薬投与後にプラセボ投与した群でのみベックうつ評価尺度におけるうつ症状の自己報告が改善されたという報告がある(PMID:19090505)。 ・糖尿病患者やそれ以外の患者の多発性神経症に対して、効果がないことが示唆されている(64)。 ・不安、気分変調、眠気過多、食欲不振、うつ、不眠、精神運動遅滞および他の自覚症状の改善が、限られた臨床試験で実証されている(23) (PMID:12424553)。 ・強迫性障害(徐放製剤の0.3%ヒペリシン12週間投与で数人の患者の症状をかなり改善)、季節性情動障害(SAD)に関連する不安・性欲減退・睡眠障害などの症状、月経前症候群(PMS)(0.3%の標準化抽出物で約50%の女性の症状を改善)に対し有効な可能性がある(64)。これらの用途に対する有効性については、さらなる科学的実証が必要である(64)。 ・注意欠陥多動性障害(ADHD)患者54名(6-17歳、試験群27名)を対象とした無作為化二重盲検プラセボコントロール試験において、0.3%ヒペリシン含有セイヨウオトギリソウを300mg×3回/日、8週間摂取させたところ、ADHD評価尺度および臨床全般印象改善尺度(Clinical Global Impression Improvement Scale)の改善は認められなかったという報告がある(PMID:18544723)。 ・口内焼灼感症候群患者39名(試験群21名、64.9±4.7歳)を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、セイヨウオトギリソウ抽出物300mg×3回/日を12週間摂取させたところ、VAS(visual analog scale:主観的な痛みの評価尺度)による評価に改善は認められなかったが、自己申告による口内の痛みの範囲は縮小したという報告がある(PMID:18331283)。
免疫・がん・炎症
・HIVに罹った成人あるいは慢性C型肝炎に対して、抗レトロウイルス剤のように経口摂取で使用した場合、効果がないことが示唆されている(64)。 ・過敏性腸症候群の患者70名(平均42歳、試験群35名、アメリカ)を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、セントジョーンズワート450mg×2/日を12週間摂取させたところ、自覚症状に影響を与えなかったという報告がある(PMID:19809408)。
骨・筋肉
発育・成長
肥満
その他
・軽度から中等度アトピー性皮膚炎18名に対するプラセボとの無作為化二重盲検試験で、セイヨウオトギリソウクリーム塗布の有効性を報告(PMID: 12807340)。 ・喫煙歴20±12.1年間、平均20.6±6.6本/日の喫煙者118名(37.6±12.4歳、試験群79名、アメリカ)を対象とした無作為化プラセボ比較試験において、禁煙とともにセイヨウオトギリソウ300mg×3回/日もしくは600mg×3回/日を12週間摂取させたところ、禁煙の継続率の増加や禁断症状の抑制に対してセイヨウオトギリソウの影響は認められなかったという報告がある(PMID:20590478)。
参 考 情 報
試験管内・ 動物他での評価
・ヒペリシンは試験管内実験においてラットの脳ミトコンドリアのモノアミンオキシダーゼ(MAO)-A型、B型両方をほぼ不可逆的に阻害することがわかっている。モノアミンオキシダーゼ(MAO)-A型(セロトニン)阻害が最大(23)。その後の実験ではヒペリシンにMAO阻害活性はないとされている。 ・ヒペリシンの肝臓保護作用がマウスとラットで実証されている(23)。 ・ヒペリシンはカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)やモノアミンオキシダーゼ(MAO)を阻害する(但し動物実験でのデータによる示唆(58))。しかしそれはヒトで効果を出すほど十分な有効量には達しないと考えられる。ヒペリシンはシグマレセプターに親和性があり、その他の様々なレセプターのアンタゴニストとして働く(64)。 ・近年抗うつ剤としてのセイヨウオトギリソウの活性がヒペリフォリンにも関係していることが明らかとなった。ヒペルフォリンはシナプスにおけるセロトニンの再取りこみを阻害し、5-HT3、5-HT4セロトニンレセプターに対する拮抗作用を示し、また、GABAやグルタミン酸のシナプトソームによる取りこみを阻害する(64)。
安全性
危険情報
・ヒトにおいては光感作はまれにしか見られないが、色白な人が本品を使用する場合、過度の日光への照射は避けるべきである(22)(23)(58)(64)。 ・アメリカにおいては規制によりアルコール飲料にのみ、香料としての使用が認められている。また蒸留液ではピペリシンを含まない場合にのみ許可されている(22)。 ・経口摂取で適切に短期間使用する場合、おそらく安全と思われる。セイヨウオトギリソウ抽出物は続けて使用した場合、少なくとも8週間までは安全だと思われる(64)。但し大量摂取した場合は、危険性が示唆されている。抽出物を一日1,800mg以上摂取すると、重症の皮膚光感受性反応を起こすため危険である(64)。 ・小児においては、経口摂取で適切に短期間使用する場合、おそらく安全と思われる。12歳以下の小児でエキスは6週間まで安全に摂取できたという報告がある(64)。 ・妊娠中、授乳中の経口摂取は、危険性が示唆されているため、使用すべきでない(64)(66)。 ・授乳中の摂取は、乳児が腹痛、嗜眠状態(うとうとすること)、傾眠になる可能性があるため使用を避ける(66)。 ・妊婦162名(カナダ)を対象とした観察コホート研究において、妊娠中のセントジョーンズワート平均615mg/日の使用(54名、32.6±5.3歳)は、奇形発生率、早産率に影響を与えなかったという報告がある(PMID:19491000)。 ・副作用としては不眠、ありありとした夢、落ち着きのなさ、不安、動揺、いらつき、胃腸の不快感、疲労感、口渇、めまい、頭痛、皮膚のかゆみ、錯覚、遅延性過敏反応など(64)。うつの患者では軽い躁状態や、二極性の患者では躁状態が誘導されることがある(64)。不眠が最も良く見られる副作用であるが、これは摂取量を減らすと軽減される(64)。一般に使用されている三環系抗うつ剤などの薬剤と比較して副作用は少なく、プロザックなどのSSRIとは同等か、副作用がやや少ないと思われる(64)(65)。 ・システマティック・レビューの結果、14件のプラセボ比較試験のうち、7件では副作用は認められず、2件は情報なし、5件で以下のような副作用が報告された:胃腸の不調、睡眠障害、吐き気、発疹、かゆみ、発赤、眠気、疲労感(65)。 ・アメリカの2002年National Health Interview Surveyのデータを解析したところ、40歳以上で過去12ヶ月間にセイヨウオトギリソウを摂取した経験のある人では、白内障の罹患数が多かったという報告がある(PMID:19895314)。
禁忌対象者
医薬品等との 相互作用
・健康な48歳の女性がセイヨウオトギリソウ425mgを1回/日と、カバカバ200mgを3回/日、10日間摂取した後、急性自己免疫性肝炎を生じたとの報告がある(PMID:16721710)。 ・セイヨウオトギリソウは薬物代謝酵素であるチトクローム(Cytochrome)P450を誘導するため、 多くの薬剤との相互作用が知られている(64) (PMID:15260917) (PMID:15916450) (PMID:18367983)。 ・日本では2000年5月、厚生省がセイヨウオトギリソウと医薬品との相互作用について医薬品等安全性情報で注意喚起を行った。薬物代謝酵素[チトクローム(Cytochrome)P450、特にサブタイプであるCYP3A4及びCYP1A2]が誘導され、インジナビル(抗HIV薬)、ジゴキシン(強心薬)、シクロスポリン(免疫抑制薬)、テオフィリン(気管支拡張薬)、ワルファリン(血液凝固防止薬)、経口避妊薬の効果が減少する可能性がある(厚生省ホームページより抜粋(101))。 ・健常成人男性16名(26-46歳)が、セントジョーンズワート90mg/日を14日間摂取し、最終日にコレステロール降下剤のプラバスタチン20mgまたはシンバスタチン10mgを単回服用したところ、プラバスタチンの薬物動態には影響はなかったが、シンバスタチンの活性代謝物であるシンバスタチン酸と総シンバスタチン(シンバスタチンとシンバスタチン酸の総和)の血漿中濃度時間曲線下面積(AUC)が減少したという報告がある(2002165549)。 ・健常成人男性14名(21.1±1.5歳、日本)を対象としたオープンラベル比較試験において、セントジョーンズワート(SJW)300mg×3回/日を14日間摂取させ、14日目のSJW最終摂取時にゾルピデム(睡眠導入剤)10mg/回を同時服用させたところ、ゾルピデムの血中濃度時間曲線下面積(AUC)や最高血中濃度(Cmax)が減少し、全身クリアランス(CL/F)が増加したという報告がある(PMID:21058968)。 ・3ヶ月以上経口避妊薬(ethinylestradiol 0.02 mg、3-ketodesogestrel 0.15 mgを含む)を使用している健康な女性16名を対象とした試験において、セイヨウオトギリソウ(hyperforin含量の少ないもの)250mg×2回/日を14日間摂取させたところ、ethinylestradiolとketodesogestrelの体内動態にはほとんど影響しなかったという報告がある(PMID:19015839)。 ・クロピドグレル(抗血小板薬、肝臓で活性代謝物に変換されて作用)低応答者10名 (28〜55歳、アメリカ) を対象としたオープンラベル試験において、セントジョーンズワート300 mg×3回/日を14日間摂取させ、クロピドグレル300 mgを投与したところ、血小板凝集能の低下、CYP3A4活性の増加が認められ、同様に冠動脈ステントを受け、クロピドグレル75 mg/日を服用中のクロピドグレル低応答患者20名 (試験群10名、平均59±10歳、アメリカ) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験においても、血小板反応性の低下と抗血小板作用の増強が認められたという報告がある (PMID:20980920) 。 ・特定の遺伝素因(SLCO1B1を持ちCYP2C8*3ノンキャリア)の健常成人男性15名 (19〜24歳、中国) を対象とした無作為化クロスオーバー比較試験において、セントジョーンズワート325 mg×3回/日を14日間摂取させ、15日目にレパグリニド1 mgを単回服用し15分後にグルコース75 gを摂取させたところ、レパグリニドの血中濃度時間曲線下面積(AUC)や最高血中濃度(Cmax)、半減期、血糖低下作用やインスリン増加作用に影響は与えなかったという報告がある (PMID:21827215) 。 ・セロトニン様作用のあるハーブやジギタリス、チラミン含有食品との相互作用が知られている(64)。 ・臨床検査において、プロトロンビン時間(血液凝固時間)、甲状腺刺激ホルモンなどの値に影響を与えることがある(64)。 ・アルツハイマー症、二極性障害、抑うつ、統合失調症の患者において、また麻酔下ではセイヨウオトギリソウ摂取が影響を与えることがある(64)。
動物他での 毒性試験
AHPAクラス分類 及び勧告
クラス2d。危険情報の項目を参照。
総合評価
妊婦の摂取は使用すべきでない。また授乳中の摂取は、乳児が腹痛、嗜眠状態(うとうとすること)、傾眠になる可能性があるため使用を避ける。 ・人によって、不眠、落ち着きのなさ、不安、動揺、いらつき、胃腸の不快感、疲労感、口渇、めまい、頭痛、皮膚のかゆみ、錯覚、遅延性過敏反応などの副作用が見られる場合がある。 ・薬物代謝酵素[チトクローム(Cytochrome)P450、特にサブタイプであるCYP3A4及びCYP1A2)]が誘導され、インジナビル(抗HIV薬)、ジゴキシン(強心薬)、シクロスポリン(免疫抑制薬)、テオフィリン(気管支拡張薬)、ワルファリン(血液凝固防止薬)、経口避妊薬などの薬の効果が減少する可能性がある。 ・セロトニン様作用のあるハーブやジギタリス、チラミン含有食品との相互作用が知られている。 ・アルツハイマー症、二極性障害、抑うつ、統合失調症の患者において、また麻酔下ではセイヨウオトギリソウ摂取が影響を与えることがある。
(注:下記の内容は、文献検索した有効性情報を抜粋したものであり、その内容を新たに評価したり保証したりしたものではありません。) ・抽出物は、軽症あるいは中等症の抑うつに対してはおそらく有効と思われる。また、不安症に対し、有効性が示唆されている。
参考文献
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