健康食品等の素材情報データベース

注意!(1) データの無断転用,引用、商用目的の利用は厳禁.(2) 以下の情報は現時点(最終更新日時)で調査できた素材の科学論文情報です. 実際に販売されている商品に以下の素材が含まれているとしても,その安全性・有効性がここに紹介した情報と一致するわけではありません.(3) 詳細情報として試験管内・動物実験の情報も掲載してありますが,この情報をヒトに直接当てはめることはできません.有効性については,ヒトを対象とした研究情報が重要です.(4) 医療機関を受診している方は,健康食品を摂取する際に医師へ相談することが大切です.「健康食品」を利用してもし体調に異常を感じたときは、直ぐに摂取を中止して医療機関を受診し,最寄りの保健所にもご相談下さい.

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項 目

内 容

名称

ノコギリヤシ (ソウパルメット) [英]Saw palmetto、Sabal [学名]Serenoa serrulataまたはSerenoa repens

概要

ノコギリヤシは北米南東部のヤシ科の植物で、45 cm〜1 mに広がる特徴的なノコギリ状の葉を持つ。ノコギリヤシの中国語名は「棕櫚子」である。薬用部位は実で、中国では古くから泌尿器疾病の治療薬 (漢方) として利用され、さらに強壮、利尿に効果があるとされてきた。俗に、「泌尿器疾患に有効である」と言われ、前立腺肥大症に対する作用など、一部にヒトでの有効性が示唆されている。安全性についてはまれに胃腸障害が見られるが、適切に使用する場合にはおそらく安全である。ただし、医薬品との相互作用が報告されており、性ホルモンに対する作用があることから、妊娠中・授乳中は使用を避ける。ドイツのコミッションE (ドイツの薬用植物の評価委員会) は、ノコギリヤシを摂取する場合、医師の定期的な診断を受けるべきであると指摘している。その他、詳細については、「すべての情報を表示」を参照。

法規・制度

・別名としてノコギリパルメットがある。果実は「医薬品的効果効能を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料) 」に区分される (30) 。

成分の特性・品質

主な成分・性質

・緑色精油、不揮発精油、ラウリン酸・リノール酸・オレイン酸などの脂肪酸類、ステロイドサポニン、樹脂、タンニン。成分は、遊離脂肪酸 (oleic acid、lauric acid、myristic acid、lonoleic acid、palmitic acid、stearic acid、caproic acid、caprylic acid、palmitoic acid、linoleic acid、arachidic acid) 、脂肪酸のステロールエステル (β-sitosterol、stigmasterol、campesterol) であり、流通品規格は脂肪酸含量85〜95%とされる。

分析法

・ノコギリヤシ中のアルコール、ステロール類の分析に、電子化学的イオン化誘導体法を用いたES-MS法 (Electrospray ionization mass spectrometry) が用いられる (PMID:9569764)
・果実から水蒸気蒸留によって得られた成分をGC-MS法によって分析したところ、これまで報告されていなかった約100以上の成分を含む144の水蒸気揮発性成分を同定し、40.4%はラウリル酸であったという報告がある (PMID:19140098)

有効性








循環器・
呼吸器


調べた文献の中で見当らない。


消化系・肝臓

調べた文献の中で見当らない。

糖尿病・
内分泌

調べた文献の中で見当らない。

生殖・泌尿器

一般情報
・前立腺肥大症に対して、おそらく有効である (64) 。48週間にわたる複数の臨床研究により、ノコギリヤシは頻尿、排尿痛、尿意切迫、会陰の重苦しさ、排尿困難などを軽減した。また夜間の尿の回数を減少し、最大及び平均尿量を増やし、残尿感を改善した。これは既存の医薬品に匹敵するほどの作用であった。ただしノコギリヤシは前立腺の大きさや、前立腺特異抗原価は減少させない。またノコギリヤシが効果を示すまでには摂取し始めてから1〜2ヶ月を要する。ほとんどの臨床研究は脂肪酸80〜90%を含むノコギリヤシ実の脂質抽出物を使用している。
・他のハーブとの組み合わせで使用した場合、前立腺肥大に対し効果がないことが示唆されている (64) 。ノコギリヤシ、ウイキョウ根、パンプキンシードオイル、レモンフラボノイドの抽出物とβ-カロテンの混合物を1日3回6ヶ月間摂取しても、良性前立腺肥大の症状を有意に改善しなかったという報告がある。
・良性前立腺肥大に対して有益である可能性が高い (25) 。1件のシステマティック・レビューによると、良性前立腺肥大における自己評点の改善は、プラセボと比較してノコギリヤシを摂取した男性の方が良かった。
・二重盲検での臨床研究が近年多数発表され (患者数600人以上) 、リポイドヘキサン抽出物あるいは超臨界CO2抽出物が、良性の前立腺肥大における排尿困難、夜間尿、頻尿、尿放出力減退などの自覚的・他覚的症状を改善することを示している (23) 。
RCT
・良性前立腺肥大を有する男性225人 (49歳以上、アメリカ) を対象とした二重盲検無作為化試験において、ノコギリヤシ抽出物 (160 mg) を1年間摂取させたところ、米国泌尿器科学会症状スコア、最大尿流量率、前立腺の大きさ、排尿後の残尿量、QOL、血清前立腺特異抗体、有害作用発生率はプラセボと差がなかった (PMID:16467543)
・中等度から重度の良性前立腺過形成の男性225名(50歳以上、試験群112名、アメリカ)を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、ノコギリヤシの実の抽出物160 mgを1日2回、1年間摂取させたところ、性機能、尿検査値、血清前立腺特異抗原に影響は認められなかった (PMID:18534327)
・良性前立腺肥大症の男性357名 (平均60.97±8.40歳、試験群176名、アメリカ) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、ノコギリヤシ抽出物320 mg/日、およびその2倍量、3倍量を各24週間ずつ (全72週間) 摂取させたところ、症状の重症度評価 (AUASI、BPH Impact Index、QOL、夜間頻尿、最大尿流量、排尿後残尿量、前立腺特異的抗原 (PSA) レベル、生殖機能、尿失禁、睡眠の質など) に影響は認められず (PMID:21954478) 、ベースラインのPSAレベル別の解析においても、PSAレベルの変化に影響は認められなかった (PMID:23253958)
・前立腺切除術を施術予定の患者75名(試験群27名、平均67.2±7.5歳、トルコ)を対象とした無作為化比較試験において、ノコギリヤシ160 mg/日を手術前に5週間摂取させたところ、手術中の失血量、微少血管密度(MVD)に影響は認められなかった (PMID:19921983)

脳・神経・
感覚器

調べた文献の中で見当らない。

免疫・がん・
炎症

調べた文献の中で見当らない。

骨・筋肉

調べた文献の中で見当らない。

発育・成長

調べた文献の中で見当らない。

肥満

調べた文献の中で見当らない。

その他

一般情報
・ノコギリヤシの有効成分は非水溶性であるため、ノコギリヤシ果実から調製した茶には効果がない可能性がある (63) 。





試験管内・
動物他での
評価

調べた文献の中で見当らない。

安全性

危険情報

<一般>
・経口で適切に摂取する場合おそらく安全である。ノコギリヤシは3年にわたる臨床試験により安全性が確認されている (94) 。
・コミッションE (ドイツの薬用植物の評価委員会) は、ノコギリヤシを摂取する場合、医師に定期的に診断を受けるべきであると指摘している。これは、ノコギリヤシは症状は緩和するが、前立腺サイズ肥大の進行を止めないため、前立腺がんの進行を見逃す可能性があるからである (58) 。
・経口摂取の副作用は一般的に軽度であり、主なものとして吐き気、嘔吐、便秘、下痢、腹部不快感、腹痛などの胃腸症状、めまい、不眠、疲労、頭痛、筋肉痛、高血圧症などが報告されている (22) (58) (63) (94) 。そのため、消化器疾患がある人や高血圧症の人は慎重に使用する必要がある (63) 。
<妊婦・授乳婦>
・男児胎児や男児乳児の性器に異常をもらたす可能性があるため、妊娠中・授乳中の摂取については、おそらく危険であるので使用を避ける。ノコギリヤシは抗アンドロゲン活性及び抗エストロゲン活性を持つ (63) (94) 。
<その他>
・ノコギリヤシまたはその成分に対するアレルギーや過敏症がある人は注意して使用する必要がある (63) 。
<被害事例>
・15年以上前にアルコール依存症だった55歳白人男性が、前立腺肥大のため約4年間断続的にノコギリヤシを摂取し、急性肝炎および膵炎を生じた症例報告がある (PMID:16800417) 。ノコギリヤシの摂取をやめると回復し、再度摂取すると膵炎と肝炎を発症したため、ノコギリヤシ摂取との関連性が強く疑われた。
・II型糖尿病や高血圧、脂質異常症などの既往歴があり、アスピリン、パントプラゾール、ラミプリル、シンバスタチン、エゼチミブ、グリブリド、メトフォルミンを服用中の65歳男性 (アメリカ) が、排尿困難の改善のためにノコギリヤシ抽出物160 mg×2回/日、1週間摂取したところ、嘔吐を伴う上腹部痛を訴え、摂取したノコギリヤシによる急性膵炎と診断された (PMID:20531057)
・ノコギリヤシとの因果関係は不明であるが、良性前立腺肥大の患者を対象にノコギリヤシ160 mg含む製品を1〜2回/日、3ヶ月間摂取させたところ、脳出血、めまい、息切れ、呼吸困難、不眠、疲労などの副作用が報告されている (63) (102) (PMID:10915398)
・前立腺がん患者70名を対象とした前向き試験において、ノコギリヤシなど7種のハーブを含む製剤を9カプセル/日投与したところ、アレルギー症状 (口蓋の腫脹や息切れなど) 、血栓塞栓症、腎不全などの副作用が認められた (63) (PMID:11054432)
・詳細は不明であるが、65歳男性と71歳男性がノコギリヤシを含む製品を摂取したところ、急性胆のう炎、遷延性胆汁うっ滞性肝炎を発症した (63) 。
・58歳男性 (イタリア) が良性前立腺肥大の改善を目的に、市販のノコギリヤシサプリメントを3カプセル/日 (乾燥抽出物900 mg含有) 、ベリーパウダーを660 mg/日で1週間摂取したところ、右季肋部の激しい痛みと無力症をおこし、急性肝障害と診断された (PMID:20573093)
・慢性閉塞性肺疾患、肺結核後遺症、高血圧、高尿酸血症で通院中の82歳男性 (日本) が、ノコギリヤシ、ペポカボチャ、マカ、イチョウ葉、ローズのサプリメントを1日摂取したところ (摂取量不明) 、発熱、急性腎不全、横紋筋融解症を発症し、薬剤リンパ球刺激試験 (DLST) でノコギリヤシ製品のみ陽性を示したことから、ノコギリヤシ製品による横紋筋融解症と診断された (PMID:22768426)
・前立腺肥大と胃食道性逆流症の既往歴があり、ランソプラゾール (制酸剤) とマルチビタミン、ノコギリヤシを3年間、併用 (摂取量不明) していた61歳男性 (アメリカ) が、心窩部痛と吐き気を生じ、急性膵炎と診断された (PMID:21867545)
・11歳女児 (イタリア) が、休止期脱毛症のために皮膚科医に処方されたノコギリヤシサプリメントを1粒/日、3ヶ月間摂取し、数日間摂取を中断した後、摂取を再開したところ、2ヶ月目から1日に数回のホットフラッシュを生じたが、摂取中止によりホットフラッシュは治まった。摂取中止の45日後に初潮が来たが、頻発、過多月経であったことから受診。Naranjo algorithm (有害事象と薬物の因果関係評価指標) は6 (probable) であったため、摂取したノコギリヤシがホットフラッシュの原因と考えられた (PMID:23027164)
・10歳女児 (イタリア) が、多毛症のために皮膚科医に処方されたノコギリヤシサプリメントを320 mg/日、3ヶ月間摂取したところ、ホットフラッシュ、急激な体重増加を生じた。摂取中止によりホットフラッシュは治まったが、再摂取したところ4日間で再発した。摂取開始4ヶ月後 (摂取中止25日後) に初潮が来たが、頻発、過多月経であった。Naranjo algorithm (有害事象と薬物の因果関係評価指標) は6 (probable) であったため、摂取したノコギリヤシがホットフラッシュの原因と考えられた (PMID:26043832)

禁忌対象者

調べた文献の中で見当らない。

医薬品等との
相互作用

<ヒト>
・53歳男性がノコギリヤシを摂取していたところ (詳細は不明) 、術中に多量の出血 (2000 cc) がおこり、手術を早急に終了したという事例も報告されている (63) (PMID:11489067) 。そのため、出血性疾患のある人や出血のリスクを高める可能性のある薬物を服用している人、手術や歯科処置を受ける前は慎重に使用する必要がある (63) 。
・高血圧、糖尿病、気管支喘息、前立腺肥大の既往歴があり、ジゴキシン、エナラプリル、グリピジド、フロセミド、ドキサゾシン、ロバスタチン、アスピリン、クロピドグレルを服用中の79歳男性 (プエルトリコ) が4年間160 mg×2/日摂取していたノコギリヤシサプリメントを1000 mg×2/日に増量し3週間摂取したところ、血尿と凝血異常 (プロトロンビン時間、部分トロンボプラスチン時間、国際標準化比の延長) を呈し、ノコギリヤシ摂取の中止により回復した (PMID:20120986)

<試験管内・動物>
・in vitro試験 (スーパーソーム、ヒト肝ミクロソーム) において、ノコギリヤシはCYP2C9活性を阻害した (PMID:24730468)
・in vitro試験 (ヒト肝ミクロソーム) において、ノコギリヤシ抽出物はCYP2C8活性を阻害した (PMID:25430798)

<理論的に考えられる相互作用>
・経口避妊薬やホルモン療法との併用で、それらの効果に影響を与えることがある (101) 。そのため、ホルモン補充療法を受けている人やホルモン感受性の状態にある人は、慎重に使用する必要がある (63) 。
・抗血液凝固薬や抗血小板薬との併用により、出血傾向が高まる可能性がある。また、臨床検査において、出血に関する項目に影響を与える可能性がある (PMID:11489067)
・ノコギリヤシを摂取すると、前立腺特異抗原 (PSA) 値を人為的に低下させる可能性があるため、前立腺がんの診断を遅らせたり、治療に影響を及ぼしたりする可能性がある (63) 。

動物他での
毒性試験

調べた文献の中で見当らない。

AHPAクラス分類
及び勧告

・クラス1 (22) 。

総合評価

安全性

・経口で適切に摂取する場合おそらく安全である。妊娠中・授乳中の摂取については、おそらく危険である。
・ノコギリヤシは抗アンドロゲン活性及び抗エストロゲン活性を持ち、経口避妊薬やホルモン療法との併用で、それらの効果に影響を与えることがある。
・抗血液凝固薬や抗血小板薬との併用で、出血傾向が高まる可能性、臨床検査において、出血に関する項目に影響を与える可能性がある。

有効性

(注:下記の内容は、文献検索した有効性情報を抜粋したものであり、その内容を新たに評価したり保証したりしたものではありません。)
・前立腺肥大症に対し、おそらく有効である。良性前立腺肥大に対して有益である可能性が高い。他のハーブ抽出物との混合物の摂取は、良性の前立腺肥大に対して効果がないことが示唆されている。

参考文献

(22) メディカルハーブ安全性ハンドブック 東京堂出版 林真一郎ら 監訳
(23) 天然食品・薬品・香粧品の事典 朝倉書店 小林彰夫ら 監訳
(25) クリニカル・エビデンス日本語版 日経BP社 日本クリニカル・エビデンス編集委員会
(58) The Complete German Commission E Monographs
(64) 健康食品データベース 第一出版 Pharmacist's Letter/Prescriber's Letterエディターズ 編 (独)国立健康・栄養研究所 監訳
(101) Herbal Medicine: A Guide for Healthcare Professionals. London, UK: The Pharmaceutical Press, 1996.
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(30) 「医薬品の範囲に関する基準」(別添2、別添3、一部改正について)
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(PMID:16800417) South Med J. 2006 Jun;99(6):611-2.
(63) ハーブ&サプリメント NATURAL STANDARDによる有効性評価 産調出版株式会社 渡邊昌日本語監修
(102) Current Therapeutic Reserch,55(7):776-785,1994
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