セレン解説

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A.セレンとは?
セレンは、1817年に発見された元素で、ギリシア語の月 (selene) に因んで名付けられました (3) 。古くから毒性の強い元素として知られていましたが、比較的最近、人にとって必須の微量元素であることが認識されるようになりました (6) 。生体内では、酵素やたんぱく質の一部を構成し (1) 、抗酸化反応において重要な役割を担っていますが (3) 、毒性が強く、必要量と中毒量の差がとても小さいため、サプリメントなどの摂取には注意が必要です。セレンは藻類、魚介類、肉類、卵黄に豊富に含まれており、通常の食事で不足することはありません (3) 。

B.セレンの供給源になる食品
主な食品のセレン含有量は以下の通りです(可食部100gあたり)。





※セレンは、「五訂増補 日本食品標準成分表」には収載されていません (4) 。

※食品中のセレン含有量は、産地の土壌中セレン濃度や飼育飼料のセレン含有量により、大きく変動します (3) (6) 。

C.セレンの特性 (単位・化学的安定性)
セレンは元素記号Se、原子番号34、原子量78.96の金属です。多くの同素体 (同一の元素から成る単体で性質の異なる物質) が存在しますが、灰黒色の金属セレンが最も安定です。硫黄、硫化物中に少量含まれて産出され、化学的性質も硫黄によく似ています。濃硫酸、硫酸には溶けますが、水、希硫酸、塩酸には溶けません (7) 。

D.セレンの吸収や働き
食品中のセレンの多くは、たんぱく質に結合して存在し、その吸収はたんぱく質の吸収と同時に行われると考えられています (3) 。消化管からの吸収率は50%以上と、高値を示します (5) 。ヒトの体内には体重1 kg当たり約250μgのセレンが存在し (1) 、体内での恒常性は、尿中への排泄により保たれています (6) 。

セレンは、過酸化水素やヒドロペルオキシドを分解するグルタチオンペルオキシターゼの構成成分です (1) 。ビタミンEやスーパーオキシドジスムターゼ (SOD) などと共に、抗酸化システムに重要な役割を担っています (3) 。この他、アスコルビン酸の再生、甲状腺ホルモンの活性化と代謝に関係する酵素の構成成分でもあります (1) 。


E.セレン不足の問題
セレン不足はどのようにして起こるのか?
通常の食生活でセレン不足が問題となることは、日本ではほとんどありません。セレン不足は、土壌中のセレン濃度が極端に低い地域において、摂取不足により起こります (1) (3) (6) 。

セレンが不足すると、どのような症状が起こるのか?
セレンが不足すると、過酸化物による細胞障害が起こると考えられます (3) 。セレンの欠乏症の一つに、低セレン地域である中国東北部に見られる克山病 (心筋症の一種) がありますが、亜セレン酸塩の投与で発症が予防されます (1) 。また、同じく低セレン地域である中国北部やシベリアの一部で、カシン・ベック症 (地方病性変形性骨軟骨関節症) が思春期の子供に認められ、セレン欠乏の関与が示唆されています (3) 。この他、完全静脈栄養施行時に、下肢の筋肉痛、皮膚の乾燥 (1) 、心筋障害 (3) などが起こると報告されています (1) 。また、セレンの含有量の少ない食事を摂取している場合、発ガンのリスクが高いことが示唆されています (6) 。

F.セレン過剰摂取のリスク
セレンは毒性が強く、必要量と中毒量の差がとても小さいため、サプリメントなどの安易な摂取には注意が必要です。セレンを慢性的に過剰摂取すると、爪の変形や脱毛、胃腸障害、下痢、疲労感、焦燥感、末梢神経障害、皮膚症状などがみられます (1) (3) (6) 。セレンをグラム単位で摂取すると、重症の胃腸障害、神経障害、心筋梗塞、急性の呼吸困難、腎不全などを引き起こします (1) (6) 。

G.セレンはどのぐらい摂取すればよいか?
各年齢別のセレンの食事摂取基準 (日本人の食事摂取基準2015年版) は以下の通りです。


H.セレン摂取状況
セレンは現在、国民健康・栄養調査の調査項目に入っていないためデータがありませんが (2) 、日本人の平均摂取量は約100μg/日とされています (3) 。

参考文献

1. 日本人の食事摂取基準 2015年版:第一出版
3. ミネラルの辞典:朝倉書店
4. 五訂増補日本食品標準成分表:文部科学省ホームページ
5. 健康・栄養食品アドバイザリースタッフ・テキストブック:第一出版
6. 専門領域の最新情報 最新栄養学 第8版:建帛社
7. 理化学辞典 第5版:岩波書店
2. 平成25年 国民健康・栄養調査報告