ヨウ素解説

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A.ヨウ素とは?
ヨウ素は、ナポレオン戦争の際、海藻から火薬を製造しているときに偶然発見された元素です (6) 。ヨードと呼ばれることもあります (8) 。生体内では、そのほとんどが甲状腺に存在し、甲状腺ホルモンの構成成分として重要な役割を担っています (1) 。ヨウ素は海水中に多く存在するため、海藻類や魚介類に豊富に含まれています (3) 。海産物を主とした高ヨウ素摂取の伝統的食習慣を持つ日本では、ヨウ素の摂取量が必要量を大幅に上回っているため、不足が問題となることはありませんが (1) (3) 、過剰摂取により健康障害が引き起こされるため、ヨウ素の摂取を目的としたサプリメント類の利用には注意が必要です。

B.ヨウ素の供給源になる食品
主な食品のヨウ素含有量は以下の通りです (可食部100 gあたり) 。




※ヨウ素は、「五訂増補 日本食品標準成分表」には収載されていません (4) 。

※食品中のヨウ素含有量は、産地の土壌中のヨウ素濃度や飼育飼料中のヨウ素含有量、ヨウ素添加量により、大きく変動します (3) (6) 。

C.ヨウ素の特性 (単位・化学的安定性)
ヨウ素は元素記号I、原子番号53、原子量126.9です。ハロゲン元素のひとつで、紫黒色で金属光沢のある結晶です。液体では赤褐色、気体では紫色を呈します。有機溶媒やヨウ化カリウム水溶液によく溶け、酸素とは反応しません。デンプンと反応して、深い青色を示します (8) 。海藻、海産動物中に、主に有機化合物の形で存在しています (8) 。

D.ヨウ素の吸収や働き
ヨウ素は食品から色々な形態で摂取されます。そのうち、ヨウ素イオンは胃と小腸でほぼ完全に吸収されます (6) 。その他の形態のヨウ素は消化管で還元されて吸収されます (1) 。吸収されたヨウ素のほとんどは甲状腺に取り込まれ、甲状腺ホルモンのチロキシン (サイロキシン、T4) 、トリヨードチロニン (トリヨードサイロニン) の構成成分として使用されます (1) (3) 。残ったヨウ素の大部分は腎臓から尿中へ、一部は糞便中に排出されます。ヨウ素は成人の体内で13 mg程度存在し、そのほとんど (12 mg) が甲状腺にあります (1) 。甲状腺ホルモンは、たんぱく質の合成、酵素反応を中心に、細胞の活動、神経細胞の発達、末梢組織の成長、エネルギー代謝に関係し、発育に不可欠なホルモンです (1) (3) (6) 。

E.ヨウ素不足の問題
ヨウ素不足はどのようにして起こるのか?
ヨウ素不足は食品からの摂取不足により起こります。海に囲まれ、海産物を主とした高ヨウ素摂取の伝統的食習慣を持つ日本では、ヨウ素の摂取量が必要量を大幅に上回り、不足が問題となることはありませんが (1) (3) 、世界的には不足が起こりやすいミネラルです (3) 。山岳地帯や内陸部など、土壌のヨウ素含量が少ない地域では特に深刻です (3) また、キャベツ、キャッサバ、トウモロコシ、タケノコ、サツマイモ、ライ豆、大豆、硬水中のカルシウムイオンなどには、甲状腺へのヨウ素の蓄積を阻害し、甲状腺腫を起こす成分(ゴイトロゲン)が含まれています (1) 。

ヨウ素が不足すると、どのような症状が起こるのか?
ヨウ素の摂取が不足すると、甲状腺ホルモンの生成が出来なくなります。そのため、下垂体からの甲状腺刺激ホルモンの分泌が増加し、甲状腺の発達を促進することで、ヨウ素不足を補おうとしますが、この状態が続くと、甲状腺の肥大、甲状腺腫が起こります (3) 。
ヨウ素欠乏による甲状腺ホルモンの生成不足により、精神発達の遅滞、甲状腺機能低下症、クレチン症、成長発達異常 (1) 、舌の巨大化、嗄声、動作の緩慢さ (3) などが起こることが知られています。特にクレチン症は、ヨウ素欠乏に由来する最も重篤な疾患です。母親のヨウ素欠乏を主な原因とし、著明な精神障害と神経系の障害を伴う成長不全をもたらすもので、今日でも発展途上国に多く発生しています (3) 。

F.ヨウ素過剰摂取のリスク
健康な人では、ヨウ素の摂取量が多少増えても、排泄により調節することが出来ますが (6) 、長期間の過剰摂取により、過剰症が起こることがあります。日本人は、その伝統的食習慣のために、ヨウ素の過剰摂取に対する影響が発現しにくい民族であると考えられていますが (1) 、日本でも海藻の多量摂取による過剰症の報告があります (3) 。ヨウ素を過剰に摂取すると、甲状腺機能低下症、甲状腺腫、甲状腺中毒症が起こります (1) 。この他、体重減少、頻脈、筋力低下、皮膚熱感などの症状が見られることもあります (6) 。食事摂取基準では、日本人の食生活の現状に合わせた上限量を算定しています (1) 。


G.ヨウ素はどのぐらい摂取すればよいか?
各年齢別のヨウ素の食事摂取基準 (日本人の食事摂取基準2010年版) は以下の通りです。

H.ヨウ素摂取状況
ヨウ素は現在、国民健康・栄養調査の調査項目に入っていないためデータがありませんが (2) 、 食事からの摂取量は0.5〜3.0 mg/日と推定されています (1) 。

参考文献

1. 日本人の食事摂取基準 2010年版:第一出版
3. ミネラルの辞典:朝倉書店
4. 五訂増補日本食品標準成分表:文部科学省ホームページ
5. 健康・栄養食品アドバイザリースタッフ・テキストブック:第一出版
6. 専門領域の最新情報 最新栄養学 第8版:建帛社
7. 厚生労働省通知 食安新発第0701002号、食安発第0701006号
8. 理化学辞典 第5版:岩波書店
9. 五訂 日本食品成分表 食品成分研究調査会編:医歯薬出版
2. 平成16年国民健康・栄養調査報告:第一出版