ヒメツルニチニチソウについて

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ヒメツルニチニチソウについて

 最近、ヒメツルニチニチソウの抽出物を配合し、「認知症 (痴呆) やアルツハイマー病に効く」「記憶力を向上する」「脳細胞を活性化する」という効果を標榜した健康食品の流通が急増しています。そこで、ヒメツルニチニチソウに関して現時点で見つけられる情報を調査してみました。

ヒメツルニチニチソウと似た名前の植物に要注意
 下表のようにヒメツルニチニチソウ (Vinca minor L.) と類似した名前の植物が数種類あり、間違える可能性があります。利用する場合、ヒメツルニチニチソウ (全草は非医薬品に区分) およびツルニチニチソウと、ニチニチソウ (全草は医薬品に区分) は厳密に区別する必要があります。
 
* 米国ハーブ製品協会 (American Herbal Products Association, AHPA)


ヒメツルニチニチソウの有効性とその判断
 ヒメツルニチニチソウの抽出物を配合した製品には「効果は医学的に実証されています」「多数の研究報告に裏付けられています」などという表示がされています。
 そこで、ヒメツルニチニチソウおよびその成分であるビンカミンについて脳循環代謝や、認知機能に及ぼす影響を検討した論文を検索したところ、いずれも医薬品製剤としてのビンカミン、あるいはビンカミンの誘導体であるビンポセチン (vinpocetine) などを用いた研究(PMID:12535455) (PMID:10383479) (PMID:6349963) であり、食品素材としてのヒメツルニチニチソウについては、現時点では信頼できるデータが不充分であることがわかりました。
 
 ドイツのコミッションE (薬用植物の評価委員会) は、ヒメツルニチニチソウとその製品について、1) 有効性に関しては充分なデータがない、2) 含まれるビンカミンは少量であり、また含有量の変動が大きいことから、摂取しても血中ビンカミン濃度の増加は期待できない、3) 副作用として、白血球およびリンパ球の減少、血中グロブリン濃度の低下の疑いがあることなどから、治療の目的でヒメツルニチニチソウやその製品を摂取することは適切でないと判断しています (2) 。
 
 医薬品としてのビンカミン (およびその誘導体であるビンポセチン) は、日本国内においては、過去に医療用医薬品 (脳循環改善薬) として脳梗塞および脳出血の後遺症に伴う慢性脳循環障害によるめまい、頭重、頭痛の改善などの目的に用いられていました。しかし再評価の結果、有効性が確認できなかったため2001年に市場より回収された経緯があります (3) 。なお現時点ではビンカミン製剤の服用による重大な健康被害の報告は見あたりません。

 一般に、伝承医学などで薬効があるとされている動植物からは、多くの成分が見いだされてきました。これらの成分は、混在する不純物を除去することにより単一の化合物に精製したり、時には構造を変化させたりなどの過程を経て、最終的に有効性や安全性が明確にできる医薬品として用いられています。医薬品は、製造方法や薬効成分の含有量などが厳密に規定されています。一方、いわゆる健康食品には通常品質などの規格はなく、素材やその抽出物に含まれる有効成分の量は一定ではありません。そのため、時には商品中には有害成分が含まれていることもあります。
 
 これらのことから、有効性・安全性のどちらの側面においても、医薬品としてのビンカミンによる研究報告を、食品素材であるヒメツルニチニチソウにそのまま当てはめることはできません。すなわち現時点で科学的なエビデンスがあるのは単一成分であるビンカミン (およびビンポセチン) であり、ヒメツルニチニチソウに同様のエビデンスがあるとは限りません (下の図を参照) 。
 

 医薬品は、どのような有害作用が起こるかよく把握した上で、リスク (有害作用) よりベネフィット (有益な作用) が上回ると判断される場合においてのみ、医療従事者の監督の下に用いられるものです。
 これに対して食品は、基本的に誰でも自由に自己判断で利用するものです。そのため有効性を求める前に、先ず安全性を確保することが重要です。専門的な知識を持たない人が「健康食品は、食品だから安全である」といった安易な思い込みで健康食品に過大な期待を抱いて過剰摂取すると、思わぬ健康被害を起こす可能性もあります。もし利用するときは、安全性に関係する商品の品質をチェックし、またその必要性を冷静に判断するようにして下さい。

参考文献

(1) メディカルハーブ安全性ハンドブック 東京堂出版 林真一郎ら 監訳
(2) The Complete German Commission E Monographs: Therapeutic Guide to Herbal Medicines, Developed by Special Expert Committee of the German Federal Institute for Drugs and Medical Devices, American Botanical Council, Austin, Texas, Published in cooperation
(PMID:12535455) Cochrane Database Syst Rev. 2003;(1):CD003119. Review.
(PMID:10383479) Altern Med Rev. 1999 Jun;4(3):144-61. Review.
(PMID:6349963) Drugs. 1983 Jul;26(1):44-69. Review.
(3) 厚生労働省ホームページ