葉酸解説

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A.葉酸とは?
葉酸は、ほうれん草の抽出物から発見されたB群ビタミンの一種で、ラテン語の「葉」を意味する「folium」と「酸」を意味する「acid」からFolic acidと命名されました。しかし、実際の葉酸は葉酸活性を持つ構造類似体の総称で、生体内や食品中では多様な形態で存在し (15) 、ヌクレオチド類の生合成やアミノ酸の代謝、タンパク質の生合成、ビタミン代謝に関与しています (8) 。以前、葉酸はビタミンM、ビタミンBcと呼ばれていたこともあります (15) 。その名称と由来から植物性食品だけに含まれているように思われがちですが、動物性食品であるレバーなどにも多く含まれています (1) (13) 。
通常の食品中葉酸 (プテロイルグルタミン酸) は、ほとんどが「ポリグルタミン酸型」 (複数のグルタミン酸が結合した形) ですが、加工食品などに添加されている葉酸は「モノグルタミン酸型」(グルタミン酸が一つ結合した形、プテロイルモノグルタミン酸) です (3) (8) 。ポリグルタミン酸型葉酸は、消化管の酵素によって消化され、モノグルタミン酸型となった後、小腸の上皮細胞から吸収されます (1) 。食品中の葉酸の相対生体利用率はプテロイルモノグルタミン酸と比べ、25〜81%と報告されており、2015年度版日本人の食事摂取基準では食事性葉酸の相対生体利用率を50%としています (1) 。


B.葉酸の供給源になる食品
主な食品の葉酸含有量 (プテロイルモノグルタミン酸相当量) は以下の通りです (11) 。(可食部100 gあたり)



※葉酸を多く含むメニュー紹介はこちら

C.葉酸の特性 (単位・化学的安定性)
葉酸は水溶性のビタミンで、酸やアルカリには溶けますが、純水やエタノールにはほとんど溶けず、アセトン、エーテル、クロロホルム、ベンゼンには溶けません。また、光に対して不安定です (14) (15) 。


D.葉酸の吸収や働き
食品中の葉酸の多くは、ポリグルタミン酸型として糖やタンパク質と結合した状態で存在しています (1) 。ポリグルタミン酸型葉酸は、食品の調理や加工、胃酸環境下において糖やタンパク質がはずれ遊離します (1) 。遊離したポリグルタミン酸型葉酸は、小腸粘膜にある酵素によってモノグルタミン酸型葉酸に分解されてから小腸細胞内へ吸収され、小腸膜上皮細胞内で酵素によって5-メチルテトラヒドロ葉酸に変換されます (9) 。その後、門脈を経由して肝臓へ輸送されます (8) 。肝臓には、全身の約50%の葉酸が蓄積されます (8) 。また、蓄積された葉酸は、再び変換されて胆汁へ移行し、これが消化管から再吸収され、組織に供給されます (腸肝循環) (19) 。葉酸の代謝は以下の通りです (3) (8) (9) (18) (19) 。




E.葉酸不足の問題
葉酸不足はどのようにして起こるのか?
食事からの摂取が不足した時や、腸からの吸収不良時に欠乏症が起こることがあります (18) 。また、妊娠時、抗がん剤・免疫抑制剤・抗けいれん剤・非経口栄養剤投与時、血液透析、アルコール中毒などの際にも欠乏症が起こることがあります (8) 。


葉酸が不足すると、どのような症状が起こるのか?
葉酸は、ホモシステインからメチオニンを生成するのに必要とされるため、不足するとホモシステインが血中に蓄積し、動脈硬化の危険因子となります (18) 。その他、葉酸が不足すると造血機能が異常を来たし、巨赤芽球性貧血、神経障害や腸機能障害などが起こります (8) 。また、胎児の神経管形成期である受胎前後〜妊娠初期までの間に、母体がプテロイルモノグルタミン酸を摂取すると、胎児の神経管閉鎖障害のリスクが低減されると報告されています (1) 。


F.葉酸過剰摂取のリスク
葉酸を大量 (1〜10 mg) 摂取すると、発熱・蕁麻疹・紅斑・かゆみ・呼吸障害などの葉酸過敏症を起こすことがあります。また、ビタミンB12欠乏症の診断を困難にしたり、亜鉛と複合体を形成して小腸からの亜鉛の吸収を抑制する可能性があるため、食事摂取基準でも上限量が設けられています (1) (8) (20) 。ただし、亜鉛吸収の阻害作用に限っては、5〜15 mg/日程度の葉酸摂取であれば影響はないという報告もあります (PMID:2667316) (20) 。


G.葉酸はどのぐらい摂取すればよいか?
各年齢別の葉酸の食事摂取基準 (日本人の食事摂取基準2015年版) は以下の通りです (1) 。

補足
食事摂取基準の推奨量はプテロイルモノグルタミン酸量として示されています。
胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のための付加量400μg/日は、加工食品などに添加されているモノグルタミン酸型葉酸、プテロイルモノグルタミン酸の量として示したものであり、これを食事性葉酸に換算すると2倍の800μg/日に相当します (1) (3) 。なお、胎児の神経管閉鎖障害の発症および再発を予防するための葉酸400μg/日付加は妊娠の1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月までの間に摂ることが望ましいとされています。

妊産婦の葉酸摂取に関する基準の詳細については、こちらの資料を参照してください。→資料
妊娠中の葉酸摂取についての解説は、「妊娠中の食事とサプリメントについて」をご参照ください。


H.葉酸摂取状況
平成25年の国民健康・栄養調査では、男性で平均289μg/日、女性で平均271μg/日摂取しており、男女とも推奨量を満たしています (12) 。


I.栄養機能食品としての関連情報
葉酸は栄養機能食品として表示許可されています。
上限値は200μg 下限値は60μgです。

・葉酸の栄養機能表示
「葉酸は、赤血球の形成を助ける栄養素です。」
「葉酸は、胎児の正常な発育に寄与する栄養素です。」

・注意喚起
「本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。1日の摂取目安量を守ってください。」「葉酸は、胎児の正常な発育に寄与する栄養素ですが、多量摂取により胎児の発育が良くなるものではありません。」

栄養機能食品の表示に関する基準の詳細については、こちらの資料を参照してください。→資料1資料2

参考文献

1.日本人の食事摂取基準 2015年版:第一出版
2.栄養学総論:三共出版株式会社
3.専門領域の最新情報 最新栄養学:建帛社
4.FOOD CHEMISTRY THIRD  EDITION:Owen R.Fennema
6.DIETARY REFERENCE INTAKE forThiamin,Riboflavin,Niacin,VitaminB6,Folate,VitaminB12,Pantothenic Acid,Biotin,and Choline: National Academy Press
8.ビタミンの辞典:朝倉書店
9.ビタミン研究のブレークスルー 日本ビタミン学会編
10.臨床栄養 vol1.106 No.1 2005
11.五訂増補日本食品標準成分表:文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会
13.オックスフォード食品・栄養学辞典:朝倉書店
14.日本薬局方解説書:廣川書店
15.生化学辞典 第4版:東京化学同人
16.医学大辞典:南山堂
17.消化と吸収:第一出版
18.ヒューマン・ニュートリション 第10版:医歯薬出版
19.薬理書 第9版:廣川書店
20.ビタミン総合辞典:朝倉書店
(PMID:2667316) Am J Clin Nutr 1989 50(2) 353-8.
12.平成25年 国民健康・栄養調査報告