健康食品等の素材情報データベース

注意!(1) データの無断転用,引用、商用目的の利用は厳禁.(2) 以下の情報は現時点(最終更新日時)で調査できた素材の科学論文情報です. 実際に販売されている商品に以下の素材が含まれているとしても,その安全性・有効性がここに紹介した情報と一致するわけではありません.(3) 詳細情報として試験管内・動物実験の情報も掲載してありますが,この情報をヒトに直接当てはめることはできません.有効性については,ヒトを対象とした研究情報が重要です.(4) 医療機関を受診している方は,健康食品を摂取する際に医師へ相談することが大切です.「健康食品」を利用してもし体調に異常を感じたときは、直ぐに摂取を中止して医療機関を受診し,最寄りの保健所にもご相談下さい.

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項 目

内 容

名称

トリプトファン [英]Tryptophan (Trp) [学名]2-amino-3- (3-indolyl) propionic acid

概要

トリプトファンは必須アミノ酸で、種々の食品に含まれるがその含有量は低い。脳内の神経伝達物質であるセロトニンやメラトニンの原料であり、精神機能の維持に重要である。俗に、「精神を安定させる」「鎮静作用がある」と言われており、月経前不快気分障害 (PMDD) に対して有効性が示唆されている。安全性については、通常の食事に含まれる量以上の経口摂取は危険性が示唆されている。サプリメントとしてトリプトファン製剤を摂取して、好酸球増多筋痛症候群という健康障害を引き起こした事例がある。妊娠中・授乳中の使用は避ける。その他、詳細については「すべての情報を表示」を参照。

法規・制度

・「医薬品的効果効能を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料)」に区分される (30) 。
・「指定添加物」:DL-体、L-体は調味料、栄養強化剤である。

成分の特性・品質

主な成分・性質

・略号TrpまたはW、C11H12N2O2、分子量 (MW) 204.23。芳香族アミノ酸の一つ。必須アミノ酸で、種々の食品のタンパク質に含まれるがその含量は低い (16) 。
・タンパク質を酵素またはアルカリで加水分解して得る。

分析法

・イオン交換クロマトグラフィーにて分離後、ニンヒドリンなどの発色試薬で発色し蛍光検出器 (励起波長440 nm、蛍光波長570 nm) を装着したアミノ酸自動分析計により分析する方法が一般的である (101) 。

有効性








循環器・
呼吸器


調べた文献の中に見当たらない。


消化系・肝臓

調べた文献の中に見当たらない。

糖尿病・
内分泌

調べた文献の中に見当たらない。

生殖・泌尿器

RCT
・月経前不快気分障害 (PMDD) の患者71名 (試験群37名、カナダ) を対象とした無作為化二重盲検プラセボコントロール試験において、トリプトファンを6 g/日、17日間摂取させたところ、気分の変調、緊張、イライラなどの症状が改善された (PMID:10721042) (PMID:10023508)

脳・神経・
感覚器

一般情報
・予備的な臨床知見によると、多動症候群 (ADD) の小児は血漿中トリプトファン濃度が低いことが示唆されている (PMID:2243904) が、注意欠陥多動性障害 (ADHD) に対する効果については、さらなる科学的根拠の蓄積が必要である (94) 。
・予備的な臨床知見によると、トリプトファンは抗うつ治療の効果を増強する可能性があるが、うつに対する効果については、さらなる科学的根拠の蓄積が必要である (94) 。
RCT
・多動てんかん患者の男児 11名 (平均11.3歳、イギリス) を対象とした無作為化二重盲検クロスオーバー試験において、トリプトファンを40 mg/kg体重、5週間経口摂取させても行動に関する症状を改善しない (PMID:6425713)
・うつ病の入院患者24名 (試験群13名、平均48.15±12.41歳、イタリア) を対象とした無作為化二重盲検プラセボコントロール試験において、クロルイミプラミン50 mg/kgにL-トリプトファン300 mg/日を28日間併用させたところ、クロルイミプラミン単独摂取よりハミルトンうつ病評価尺度を改善した (PMID:6381336)
・内因性うつ病の女性患者24名 (試験群12名、平均47.2歳、スウェーデン) を対象とした無作為化二重盲検プラセボコントロール試験において、クロルイミプラミン150 mg/日にDL-トリプトファン0.1 g/kg体重/日、3週間併用摂取させたところ、クロルイミプラミン単独摂取より症状の改善が認められた (PMID:985049)
その他
・季節性感情障害 (SAD; seasonal affective disorder) 患者13名 (カナダ) を対象とした試験において、トリプトファンを2 g×2〜3回/日4週間摂取させたところ症状の改善が見られた人もいたという予備的な報告がある (PMID:9716275) が、この効果については、さらなる科学的根拠の蓄積が必要である (94) 。

免疫・がん・
炎症

調べた文献の中に見当たらない。

骨・筋肉

一般情報
・筋膜痛の治療に経口摂取で効果がないことが示唆されている (94) 。
RCT
・筋筋膜性疼痛患者27名 (アメリカ) を対象とした無作為化二重盲検プラセボコントロール試験において、トリプトファンを50 mg/kg体重、5週間摂取させたが症状の改善は認められなかった (PMID:2708725)
・顎顔面痛患者30名 (試験群15名、アメリカ) を対象とした無作為化二重盲検プラセボコントロール試験において、トリプトファン500 mg×6回/日、4週間摂取させたが痛みや気分の落ち込みを改善しなかった (PMID:6764935)

発育・成長

調べた文献の中に見当たらない。

肥満

調べた文献の中に見当たらない。

その他

RCT
・歯ぎしり患者8名 (平均36.6歳、アメリカ) を対象とした無作為化プラセボコントロールクロスオーバー試験において、トリプトファン50 mg/kg体重を8日間摂取させても効果がなかった (PMID:1812137)
・1日15本以上の喫煙者31名 (18〜60歳、試験群16名、アメリカ) を対象とした無作為化プラセボコントロール試験において、高炭水化物食と共にL-トリプトファン50 mg/kg体重/日、2週間摂取させたところ、低炭水化物食とプラセボを摂取した群と比較して、禁断症状の緩和 (Multiple Affect Adjective Checklistの不安指標とSmoker Complaint Scaleによる禁断症状) が見られた (PMID:1880796)
・運動能力向上に対して経口摂取で効果がないことが示唆されている。健康な持久力を養った運動選手10名 (平均23.3歳±4.4歳、オランダ) を対象とした無作為化二重盲検クロスオーバー試験において、自転車エルゴメーター運動中にトリプトファン3 g/L含有した水を自由摂取 (トリプトファンの平均摂取量3.9 g) させたが、運動能に変化は見られなかった (PMID:7473239)
その他
・睡眠時無呼吸症候群患者15名 (平均48.2±13.1歳、平均体重224.1ポンド、アメリカ) を対象とした自己対象前後比較試験において、L-トリプトファンを就寝前に平均2,500 mg摂取させたところ、閉塞性睡眠時無呼吸の患者については症状の改善が見られたが中枢性無呼吸には効果がないという予備的な報告がある (PMID:6360258) が、この効果については、さらなる科学的根拠の蓄積が必要である (94) 。
・睡眠潜時 (眠りにつくまでの時間) が30分以上の健常男性15名 (21〜35歳、アメリカ) を対象とした自己対象比較試験において、L-トリプトファン1 gを就寝前に摂取させたところ睡眠潜時が短縮したという予備的な報告がある (PMID:469515) が、この効果については、さらなる科学的根拠の蓄積が必要である。





試験管内・
動物他での
評価

・トリプトファン欠乏餌 (正常飼料の約8%) で幼若期より育成したラットは、正常飼料育成のラットに比べ、学習能力が低かった (1992006681) 。

安全性

危険情報

<一般>
・危険性が示唆されている (94) 。経口摂取で、好酸球増多筋痛症候群 (eosinophilia myalgia syndrome:EMS) および死のリスクが高まる (PMID:8624177) (PMID:8895184) (PMID:8015323) (94) (102) 。1989年米国でトリプトファン摂取により1500例以上の好酸球増多筋痛症候群 (eosinophilia myalgia syndrome:EMS) および37人の死亡例がみられた。これは製品に混在する異種化合物によるものとの見方もあるが、明確にはなっていない (94) 。この理由からトリプトファンは1990年に市場から回収された (94) 。
・米国で、L-トリプトファン含有食品摂取中に、末梢血好酸球増多と激しい筋肉痛を訴えた症例が3例報告され、FDA (米国食品医薬品局) はトリプトファン添加食品の店頭回収を勧告した (1993240845) 。
・副作用としては経口摂取で胸焼け、腹痛、おくび、膨満、吐き気、嘔吐、下痢などの胃腸症状のほか、頭痛、ふらつき、口渇、かすみ目、運動失調、傾眠があげられる(PMID:11687048)。30〜90 mg/kgの摂取で多幸感が起きることがある (PMID:11687048)
・ヒトにおけるTDLo (最小中毒量:toxic dose lowest) は男性で300 mg/kgおよび857 mg/kg/30日、女性で10,960 mg/kg/20週、2,700 mg/kg/13週、3,276 mg/kg/9週、9 g/kg/22週、4,800 mg/kg/34週、5,400 mg/kg/134週という報告がある (91) 。
<妊婦・授乳婦>
・妊娠中の摂取はおそらく危険である。正常な妊娠女性 (妊娠37〜41週) がトリプトファン1 gを経口摂取すると胎児の呼吸不全が起きることがある (PMID:3728581)
・授乳中の安全性については情報が十分でないため、使用を避ける (94) 。
<その他>
・肝硬変の患者が長期摂取すると脳内にトリプトファンが増え、セロトニンが過剰になり脳の機能が低下して昏睡状態に陥る (肝性脳症) (1) 。
<被害事例>
・トリプトファン製剤摂取との因果関係が疑われる好酸球増多筋肉痛症候群が報告されている。
1) 57歳男性 (日本) がL-トリプトファンを約21ヶ月間内服し、全身の紅斑、下肢の浮腫、体重の減少、四肢の硬化が発現した (1992207851)。
2) 72〜74歳女性 (日本) がL-トリプトファン製剤を1.0 g/日、4〜5ヶ月間(総量114.0〜168.0 g)内服後、前腕又は下肢より始まる腫脹・全身の皮膚硬化が見られた(1992071482)。
・トリプトファンは好酸球増多筋痛症候群(EMS)への関与が示唆されている (103)。理論的には好中球増加症や肝障害、腎障害を悪化させる可能性がある (94)。また、好中球数や肝機能などの臨床検査値に影響を与える可能性がある (PMID:8624177)

禁忌対象者

調べた文献の中に見当たらない。

医薬品等との
相互作用

<ヒト>
・19歳男性 (アメリカ) がトリプトファンと高用量のセントジョーンズワートとの併用でセロトニン症候群を起こした症例報告がある (PMID:15666281)

<理論的に考えられる相互作用>
・鎮静作用のあるハーブやサプリメント、医薬品との併用で、その効果や副作用を増強することが考えられる (PMID:4025206) (94) 。
・選択的セロトニン再取り込み阻害剤 (SSRIs) やデキストロメトルファン、メペリジン、ペンタゾシン、トラマドール、モノアミンオキシダーゼ (MAO) 阻害剤などの医薬品やセロトニン様作用のあるハーブ・サプリメント併用で、セロトニン症候群、またコール・フレミング症候群のような脳血管収縮障害が起こる可能性がある (PMID:8254702) (PMID:11781419)
・セロトニン様作用のあるハーブやサプリメントとの併用で、その効果や副作用を増強する可能性がある (PMID:8254702)
・セントジョーンズワートとの併用でセロトニン症候群のリスクが上昇する可能性がある (94) 。
・ベンゾジアゼピン誘導体、フェノチアジン誘導体との併用で、性的抑制解除、可逆的ジスキネジー (運動障害) 、パーキンソン様硬直などの症状が出ることがある (94) 。

動物他での
毒性試験

・急性毒性:L-トリプトファンをラットに経口投与したときの50%致死量(LD50)は16 g/kg以上であり、眼瞼下垂、昏睡、体温低下をもたらす (91) 。
・11週齢のddY系雄性マウスにトリプトファン0.15〜1.25%含有食を2週間経口投与したところ、トリプトファン0.15%含有食群では海馬のNGF (nerve growth factor: 神経成長因子) 濃度と大脳皮質のBDNF (brain-derived neurotrophic factor: 脳由来神経栄養因子) 濃度が低下した (1999227689) 。

AHPAクラス分類
及び勧告

・参考文献中に記載なし (22) 。

総合評価

安全性

・サプリメントとしての経口摂取は危険性が示唆されている。妊娠中・授乳中の使用は避ける。
・経口摂取での副作用として、吐き気、頭痛、ふらつき、口渇、かすみ目、運動失調、傾眠などがある。
・サプリメントとしてトリプトファン製剤を摂取して、好酸球増多筋痛症候群という健康障害を引き起こした事例がある。

有効性

(注:下記の内容は、文献検索した有効性情報を抜粋したものであり、その内容を新たに評価したり保証したりしたものではありません。)
・経口摂取で月経前不快気分障害 (PMDD) に対して、また禁煙補助剤として有効性が示唆されている。
・経口摂取で筋膜痛の治療、歯ぎしりの治療、運動能力の向上には効果がないことが示唆されている。

参考文献

(1) 最新栄養学 第7版 (建帛社) 木村修一ら 翻訳監修
(16) 生化学辞典 第3版 東京化学同人
(30) 「医薬品の範囲に関する基準」(別添2、別添3、一部改正について)
(22) メディカルハーブ安全性ハンドブック 東京堂出版 林真一郎ら 監訳
(101) 衛生試験法・注解2000 金原出版株式会社 日本薬学会編
(102)食品衛生学雑誌 40::335-355,1999.
(103) FDA Center for Food Safety and Applied Nutrition. February (2001.). Information paper on L-tryptophan and 5-hydroxy-L-tryptophan. Office of Nutritional Products,Labeling,Dietary Supplements.
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