健康食品等の素材情報データベース

注意!(1) データの無断転用,引用、商用目的の利用は厳禁.(2) 以下の情報は現時点(最終更新日時)で調査できた素材の科学論文情報です. 実際に販売されている商品に以下の素材が含まれているとしても,その安全性・有効性がここに紹介した情報と一致するわけではありません.(3) 詳細情報として試験管内・動物実験の情報も掲載してありますが,この情報をヒトに直接当てはめることはできません.有効性については,ヒトを対象とした研究情報が重要です.(4) 医療機関を受診している方は,健康食品を摂取する際に医師へ相談することが大切です.「健康食品」を利用してもし体調に異常を感じたときは、直ぐに摂取を中止して医療機関を受診し,最寄りの保健所にもご相談下さい.

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項 目

内 容

名称

鉄 [英]Iron (Fe) [学名]Iron (Fe)

概要

鉄は、主に赤血球のヘモグロビンと結合して体内の70%が血液中、残りは肝臓、脾臓、骨髄、筋肉などに存在し、酸素の運搬、細胞呼吸に重要な役割を担っている。鉄欠乏症は世界的に最もよく見られる栄養失調である。特に新生児や妊婦の鉄欠乏は、重篤な貧血を起こすことがあり、鉄の栄養学的な重要性が見直されている。一般に「血液を造る」などと言われ、鉄欠乏性貧血の治療に対してヒトでの有効性が示唆されている。ヘム鉄を関与成分とした特定保健用食品が許可されている。安全性については、適切に摂取すればおそらく安全であるが、過剰摂取により鉄沈着病、胃腸障害などを起こすことがある。鉄を多く含む食品としては、レバー、あさり佃煮、ほうれん草などがある。その他、詳細については、「すべての情報を表示」を参照。基礎的な解説は「鉄解説」を参照。

法規・制度

・「医薬品的効果効能を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料)」に区分される (30) 。「既存添加物」フェリチンおよびヘム鉄は強化剤。鉄は強化剤、製造用剤。「栄養機能食品」の対象成分である (下限値:2.25 mg、上限値:10 mg) 。→通知文1 (PDF) 通知文2 (PDF)
・ヘム鉄を関与成分とした「特定保健用食品」がある。

成分の特性・品質

主な成分・性質

・元素記号Fe、原子番号26。原子量55.85。固体では金属か鉄化合物として存在。水溶液中では2価の第一鉄か3価の第二鉄のいずれかの酸化状態をとり、そのことから酸化還元反応の触媒として働くことができる。動物に含まれるヘム鉄は生体内での吸収率がよい。

分析法

・原子吸光法、または1, 10-フェナントロリン吸光光度法で測定されている (109) 。

有効性








循環器・
呼吸器


一般情報
・鉄欠乏性の貧血に経口摂取で有効である (94) 。
・経口摂取でエリスロポエチンと併用で、慢性腎不全や、化学療法を受けている患者の貧血の治療に有効である (94) 。鉄のサプリメントは造血組織の薬剤への反応を確保するために、エリスロポエチン治療に必要とされるが、これは赤血球の鉄欠乏に限ったことではない (94) 。
・ループ縫合法により胃部手術をした月経中の女性の鉄欠乏症の予防に、経口摂取で有効性が示唆されている (66) 。閉経後の女性において、胃部バイパス手術1ヶ月後から鉄摂取を始めたところ、鉄欠乏症発生率を低下させたという報告がある (66) 。
・手術後のヘモグロビン減少の予防を目的として、手術前の経口摂取は有効性が示唆されている (66) 。手術前1ヶ月から鉄摂取を始めたところ、手術直後のヘモグロビン減少を抑えたという報告がある (66) 。
・ヘム鉄を関与成分とした特定保健用食品が許可されており、表示例は「鉄の補給を必要とする貧血気味の人に適します」である。
メタ分析
・2011年5月までを対象に3つのデータベースで検索できた無作為化比較試験6報について検討したメタ分析において、腰または膝の手術を受けた高齢者による鉄サプリメントの摂取は、術後の血中ヘモグロビン濃度増加と関連が認められたが、入院期間、病状、1ヶ月後までの死亡率、感染率、輸血率・量、副作用に影響は認められなかった (PMID:21962806)
・2011年8月までを対象に5つのデータベースで検索できた無作為化比較試験4報について検討したメタ分析において、慢性心不全の鉄欠乏患者による鉄の摂取は、死亡率に影響は与えなかったが、QOL (NYHA class、MLHWFQ) の改善、入院期間、C反応性蛋白濃度の減少、6分間歩行距離の増加と関連が認められた (PMID:22348897)
・2014年6月までを対象に2つのデータベースで検索できた前向きコホート研究13報について検討したメタ分析において、非ヘム鉄 (8報) および総鉄 (8報) 摂取量は心血管疾患リスクと関連が認められなかったが、ヘム鉄 (12報) の摂取量が多いと心血管疾患リスク増加と関連が認められた。ただし、試験によるバラツキが大きかった (PMID:25439662)
・2013年6月までを対象に2つのデータベースで検索できたコホート研究21報について検討したメタ分析において、食事からの総鉄 (5報) の摂取は冠動脈疾患発症リスク低下と関連が認められたが、非ヘム鉄 (2報) では関連が認められず、ヘム鉄 (4報) の摂取はリスク増加と関連が認められた。いずれも、冠動脈疾患による死亡率 (各2報、2報、4報) との関連は認められなかった (PMID:24401818)
RCT
・股関節骨折の手術後で、ヘモグロビン濃度110 g/L未満の患者300名 (試験群150名、平均81歳、イギリス) を対象とした無作為化比較試験において、硫酸鉄200 mg×2回/日を28日間摂取させたところ、退院6週間後のヘモグロビン濃度や入院期間、1年以内の死亡率に影響は与えなかった (PMID:20124051)


消化系・肝臓

調べた文献の中で見当らない。

糖尿病・
内分泌

調べた文献の中で見当らない。

生殖・泌尿器

調べた文献の中で見当らない。

脳・神経・
感覚器

一般情報
・鉄のサプリメントはADHD (注意欠損/多動性障害) の症状を改善するという予備的な臨床報告がある (94) 。
メタ分析
・2013年7月までを対象に8つのデータベースで検索できた無作為化比較試験32報について検討したメタ分析において、児童期における鉄の摂取は、認知機能テスト全般 (9報) 、迷路テスト (4報) 、事務テスト (4報) の結果、年齢身長比zスコア (5報)を改善させたが、他の認知機能テスト (IQテスト (5報) 、数唱テスト (5報) 、視覚記憶テスト (3報) 、数学テスト (3報) 、言語テスト (2報) ) の結果、体重 (5報) 、マラリア感染率 (4報) に影響は認められず、貧血の児童を対象とした解析ではIQテスト (3報) の結果、年齢体重比zスコア (1報) の改善が認められた (PMID:24130243)
RCT
・18〜35歳の女性113名 (アメリカ) を対象とした無作為化単盲検比較試験において、治療前の時点で、鉄が充足している被験者では欠乏している被験者より認知機能が高いこと、また徐放性の硫酸鉄製剤を1日160 mg (元素鉄として60 mg) 16週間摂取させたところ、血清フェリチンの改善と認知機能の改善に相関があり、ヘモグロビン値の改善は認知的な作業速度の改善と関連がみられた (PMID:17344500)
・4〜6ヶ月齢の健康な乳児560名 (試験群421名、タイ) を対象とした無作為化プラセボ比較試験において、亜鉛10 mg/日、鉄10 mg/日を単独または併用で6ヶ月間摂取させたところ、9歳の時点における認知機能 (IQ、WISC-III、学校の成績) に影響は認められなかった (PMID:21270383)
・健康な乳児1,120名 (試験群576名、チリ) を対象とした二重盲検無作為化比較試験において、鉄強化乳 (平均12.7 mg/L含有) を6ヶ月齢〜12ヶ月齢の期間摂取させたところ、低鉄含有乳 (平均2.3 mg/L含有) を摂取させた群と比較して、10歳時 (473名、試験群244名) での空間記憶、視覚-運動統合発達検査の評価が低かった (PMID:22064877)
・12〜35ヶ月齢の乳幼児734名 (試験群546名、ネパール) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、鉄12.5 mg/日+葉酸50μg/日、亜鉛10 mg/日のいずれかまたは両者を36ヶ月齢時まで摂取させたところ、7〜9歳時における知能や運動機能、実行機能 (UNIT、Stroop test、Backward Digit Span test、Go/no-go test、MABC、Finger-tapping test) に影響は認められなかった (PMID:22566538)
・鉄欠乏の小児321名 (6〜11歳、試験群160名、南アフリカ) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較において、鉄50 mgを単独またはDHA 420 mg+EPA 80 mgと併用で4回/週、8.5ヶ月間摂取させたところ、認知機能評価 (HVLT、K-ABC) 10項目中1項目でのみ、改善が認められた (PMID:23097272)
・低出生体重児224名 (試験群147名、スウェーデン) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、鉄1 mg/kg体重/日または2 mg/kg体重/日を6週齢から6ヶ月齢まで摂取させたところ、3.5歳時の問題行動指標 (CBCL) 12項目中2項目でのみ改善が認められたが、その他項目や認知機能 (WPPSI-III) に影響は認められなかった (PMID:23230066)

免疫・がん・
炎症

RCT
・妊婦470名 (試験群237名、中央値24.0歳、ケニア) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、鉄平均5.7 mg/日含有の強化食に加えて、鉄60 mg/日を妊娠13〜23週より出産後1ヶ月まで摂取させたところ、子の出生体重の増加、早産リスクの低下が認められたが、妊娠中のマラリア感染リスクに影響は認められなかった (PMID:26348751)

骨・筋肉

調べた文献の中で見当らない。

発育・成長

一般情報
・鉄欠乏症の小児および思春期の若者における、認識能 (言語習得、記憶など) の向上に経口摂取で有効性が示唆されているであろう (94) 。
メタ分析
・2010年2月までを対象に3つのデータベースで検索できた無作為化比較試験28報について検討したメタ分析において、胎児 (7報) および幼児〜18歳まで (21報) の時期における、鉄強化食品またはサプリメントの摂取は、身長 (19報) 、体重 (19報) 、腕囲 (8報) 、頭囲 (2報) 、出生時体重 (6報) 、在胎期間 (5報) に影響は与えなかった (PMID:23731448)
・2012年5月までを対象に2つのデータベースで検索できた無作為化比較試験48報と前向きコホート研究44報について検討したメタ分析において、妊娠中の母親の鉄サプリメント摂取は、母親の貧血リスク (19報) および低出生体重児のリスク (13報) を減少させたが、早産のリスク (12報) 、出生時の身長 (8報) に影響は与えなかった (PMID:23794316)
・2013年3月までを対象に7つのデータベースで検索できた無作為化比較試験33報について検討したメタ分析において、乳幼児 (4〜23ヶ月齢) における鉄サプリメントの摂取は、貧血 (17報) の発症リスク低下との関連が認められたが、精神運動の発達 (Bayley発達検査:6報) 、体重、体重Zスコア (各8報) 、身長 (7報) 、身長Zスコア (8報) に影響は認められず、試験期間中の身長および体重の増加量 (各8報) の低下が認められ、有害事象のうち嘔吐、発熱の発生リスクが高かった (PMID:25104162)

肥満

調べた文献の中で見当らない。

その他

一般情報
・ACE (アンギオテンシン変換酵素) 阻害剤の副作用である咳に対して、経口摂取で有効性が示唆されている (94) 。硫酸鉄256 mg/日摂取で、ACE阻害剤由来の咳を完全に、あるいはある程度抑えた報告がある (94) 。
メタ分析
・2015年11月までを対象に16のデータベースで検索できた無作為化比較67報について検討したメタ分析において、月経のある女性による鉄の摂取は、貧血 (10報) リスクの低下、ヘモグロビン値 (51報) 、運動時の最大酸素摂取量 (8報) 、BMI (6報) の増加と関連が認められたが、運動時の最大呼吸速度 (4報) や心拍 (5報) 、運動による乳酸蓄積 (4報) 、身長 (4報) 、体重 (8報) に影響は認められず、胃腸症状 (5報) 、下痢 (6報) 、便秘 (8報) 、腹痛 (7報) 、吐き気 (8報) 、便色の変化 (4報) 、頭痛 (4報) の副作用の発生率が高かった (PMID:27087396)
RCT
・1〜36ヶ月齢の乳幼児25,490名 (試験群17,079名、ネパール) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、鉄12.5 mg/日+葉酸50μg/日、またはこれらに亜鉛10 mg/日を加えて36ヶ月齢時まで摂取させたところ (1〜11ヶ月齢児は半分量) 、48ヶ月齢までの死亡率、下痢や呼吸器感染症の発症率に影響は認められなかった (PMID:16413878)
その他
・高齢女性38,772名 (平均61.6歳、アメリカ) を対象に平均19年間の追跡を行ったコホート研究において、カルシウムサプリメント利用者では総死亡リスクの低下が認められたが、マルチビタミン、ビタミンB6、葉酸、鉄、マグネシウム、亜鉛、銅サプリメントの利用者では死亡リスクの増加が認められた (PMID:21987192)

(欠乏症・先天性異常)
・欠乏により、貧血 (1) (3) (4) (14) (53) (56) (55) をおこし、息切れ・めまい (5) 、作業能力が低下する (1) 。
・欠乏により食欲不振、便秘、下痢、慢性胃炎などを招く (5) 。
・欠乏により精神的ストレスとうつを招く (53) 。
・欠乏することで免疫適格性が低下し (56) 、感染免疫力低下を招く (1) 。
・欠乏により体温調節阻害 (1) 、慢性疲労 (53) 、鉛中毒 (鉄欠状態で鉛の吸収増加が見られる) (1) 。





試験管内・
動物他での
評価

調べた文献の中で見当らない。

安全性

危険情報

<一般>
・過剰摂取により鉄沈着症 (3) 、血色素症、眼球鉄症、遺伝性ヘモクロマトーゼ (55) 、胃腸障害 (便秘・吐き気・嘔吐) (94) を招く。脂溶性の経口調剤は、歯を黒くする可能性がある (94) 。
・鉄は、胃潰瘍、消化性潰瘍、潰瘍性大腸炎の症状を悪化させる可能性がある (94) 。
・冠状動脈疾患リスクが上昇する (56) (94) 、あるいはヘム鉄での過剰摂取のみが関連があるとする報告もある (66) が、最近の調査では関連はないとも報告されている (1) (66) 。ビタミンEを補足せずに鉄のみを補給された早期産児の溶血性貧血 (1) (94) 、及び疫学的に高濃度の鉄が(男性の)がん死亡率のリスクをあげるという報告ある (1) (94) 。
・過剰な経口摂取はおそらく危険である (94) 。体重1キロあたり30 mgで急性中毒を起こす。60 mg/kg以上の急性毒性濃度で嘔吐や下痢が起こり、次いで心臓血管系または代謝系に異常をきたし死に至ることがある。長期間、多量に摂取するとヘモシデリン沈着症や多機能不全の原因となる。致死量は180〜300 mg/kgとみられるが、60 mg/kgでも死に至るという報告もある (94) 。
・高濃度の体内鉄 (血中および貯蔵鉄) とがんとの相関についてはたくさんの説があり、結論はでていない。体内鉄 (とくにヘム鉄) と冠状心疾患との相関についても諸説があるが、現在のところ、鉄の摂取と心疾患の間に相関があるという確証はない (66) 。
・非経口または腸内投与の鉄サプリメントを使用している自転車競技選手18名 (29.6 ± 4.3歳、ブラジル) において、肝臓および脾臓の鉄蓄積が認められた。サプリメントの平均利用期間は、非経口で4.8±3.4年、腸内投与で4.3±3.6年、平均摂取量は合計46.0±48.9 gであった (PMID:23176770)
<妊婦・授乳婦>
・経口摂取で適切に用いれば、健常人 (14歳以上) および妊娠中・授乳中でもおそらく安全である。鉄欠乏症患者の治療としては、ほとんどの場合一日300 mgまでは安全に摂取できると考えられるが、胃腸障害の可能性は高くなる。出産時にヘモグロビン濃度が高いと正常な分娩に悪影響が出ることがあり、おそらく危険である (94) 。
・妊娠第2トリメスター (妊娠中期:12〜24週) の早期に、ヘモグロビン値が13.2 g/dL以上の妊娠女性727名 (試験群370名、イラン) に硫酸鉄を1日50 mg摂取させたところ、妊娠期間に対する低体重出産率および高血圧症の患者数が増加した (PMID:17516958)
・妊婦179名 (試験群90名、平均26.62±4.51歳、イラン) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、硫酸鉄50 mg/日を妊娠20週目から出産まで摂取させたところ、消化器症状 (吐き気、嘔吐、下痢、便秘、食欲低下、胸焼け、腹痛) の発生頻度に影響は認められなかった (PMID:26430520)
<小児>
・小児でも適切に用いれば経口摂取でおそらく安全である。しかし過剰な経口摂取はおそらく危険である。欠乏症でない小児や乳児では一日の許容量を超えて摂取しないこと。60 mg/kgで死に至ると考えられる (94) 。
<その他>
・長期透析患者64名 (20〜68歳、日本) において、鉄過剰負荷 (輸血と鉄剤投与) と骨関節障害の関係を検討したところ、骨関節障害の原因の一つに、鉄の過剰負荷 (輸血総量40〜60単位、鉄剤投与総量200〜5,000 mg) が考えられた (1991007082) 。
<被害事例>
・鉄剤の長期摂取との関連が疑われる健康被害が報告されている。
1) 76歳女性 (日本) が、約20年間にわたり鉄剤400 mg/日を内服し、過剰内服によるヘモジデローシスと診断された (2002125579) 。
2) 42歳男性 (アメリカ) が鉄のグルコン酸塩60 mgを7年間摂取し、体重減少、関節痛、不整脈、色素沈着、肝硬変を呈した (PMID:16838333)
3) 68歳女性 (アメリカ) が硫酸鉄 (II) サプリメント (鉄として100 mg含有) を15年間摂取し、関節炎と色素沈着を呈した (PMID:16838333)
4) 72歳女性 (アメリカ) がグルコン酸鉄サプリメント (鉄として105 mg/日) を35年間摂取し、肝腫大、セアリック病、頚動脈アテローム硬化症を呈した (PMID:16838333)
5) 73歳女性 (アメリカ) がフマル酸鉄サプリメント (鉄として220 mg/日) を12年間摂取し、冠状動脈と頚動脈のアテローム硬化症、関節炎を呈した (PMID:16838333)

・潰瘍性大腸炎患者41名中19名 (日本) で、明らかな一過性肝障害が見られ、鉄剤投与 (静脈内投与) との関連性が考えられた (2003311901) 。
・慢性特発性血小板減少性紫斑病患者 (41歳、女性、日本) が鉄欠乏性貧血を合併したため、鉄剤を投与 (鉄として100 mg/日を6週間、50 mg/日を4週間) したところ、著しい血小板数の減少を認めた (1997113139) 。
・鉄欠乏性貧血の84歳女性 (アメリカ) が、鉄剤を摂取していたところ (量、期間不明) 、喀血を呈し、医療機関を受診。鉄剤による気道粘膜潰瘍と診断された (PMID:22508539)
・ウィルソン病の既往歴があり、D-ペニシラミン治療で症状が安定していた21歳女性 (日本) が、ダイズ由来サプリメントを1ヶ月間摂取したところ、摂取開始2ヶ月後に黄疸を伴う劇症肝炎、溶血性貧血を生じ、肝臓移植を受けた。摂取したサプリメントに大量の銅 (0.8〜2.5 mg/日) と鉄 (23.4 mg/日) が含まれていたため、当該製品が原因と診断された (PMID:26192177)
・ビタミンB12、鉄欠乏で9ヶ月前から治療を受けていた60歳男性 (イギリス) が、体重減少、便秘、下腹部痛を訴え検査をしたところ、重度の胃炎、潰瘍化、鉄の蓄積が認められ、鉄剤によるびらん性粘膜障害と診断された。鉄剤の中止と加療により改善した (PMID:26443099)

禁忌対象者

調べた文献の中で見当らない。

医薬品等との
相互作用

<ヒト>
・健常女性26名 (試験群13名、平均39±5歳、チリ) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、炭酸カルシウム600 mg/日を34日間摂取させたところ、ヘム鉄および非ヘム鉄のバイオアベイラビリティに影響は認められなかった (PMID:24290597)

<理論的に考えられる相互作用>
・H2ブロッカーの長期投与は鉄の吸収不良を引き起こすことがある。これは、胃酸分泌を抑えるのに鉄の吸収が欠かせないためと考えられる (PMID:2905759) (101) (PMID:7286584) (PMID:9626024) (PMID:2979236)
・プロトンポンプ阻害薬との併用は、腸管内のpH上昇により鉄吸収を低下させることがある (PMID:2905759)(101) (PMID:2979236) (PMID:1607604) 。また、アミノサリチル酸、制酸剤、アスピリン、非ステロイド系抗炎症剤、コレスチラミン、フルオロキノロン、パンクレアチン、ペニシラミン、テトラサイクリンは鉄の吸収率を低下させるため、併用の際は二時間以上空けるか、食事と共に摂取すること (101) (106) (107) (PMID:2905759) (PMID:2979236) (PMID:10756616) (PMID:3987479) (PMID:2756973) (PMID:6285552) (PMID:1869762)
・他のハーブやサプリメント、医薬品、食品との相互作用として下記の事項が報告されている:
1)アカシアと鉄塩の結合でアカシアが沈殿する (105) 。
2)アルミニウムやカルシウムを含む制酸薬との併用で鉄の吸収が低くなるおそれがあるので、2時間以上間隔をおいて摂取すること (PMID:2905759) (101) (106) (107) 。
3) カルシウムが鉄の吸収を低めるおそれがあるので、鉄欠乏患者はカルシウム・サプリメントの摂取を避けること。もしくは2時間以上間隔をおいて摂取すること (102) (PMID:9665089) (PMID:10799377) (108) (PMID:9665102) (PMID:1442655) (PMID:9197130)
4) 大豆タンパクは食品中の非ヘム鉄の吸収率を下げる (PMID:10799377) (PMID:9197130) (PMID:8092092)
5) 茶やコーヒーなどのタンニンを含有する食品、タンニンは鉄の吸収率を低下させる(PMID:10799377)(PMID:6402915)(PMID:9537604) (PMID:9537620)
6) 茶やコーヒー中のカフェインは鉄の吸収を阻害する可能性が示唆されている(PMID:9537620)
7) 乳製品は鉄の吸収率を低下させるが、貯蔵鉄の量が正常な人では影響は無い(PMID:1600930)
8) ビタミンB2欠乏症の人では、ビタミンB2サプリメントは鉄のサプリメントへの反応を良くする (PMID:10948381)
9) ビタミンCは非ヘム鉄の吸収を上げる (PMID:9197130) (PMID:9537620) (PMID:10948381)
10) 亜鉛は空腹時では鉄の吸収を妨げるため、これらのサプリメントを併用する場合は食事と共に摂取すること (PMID: 6475824) (PMID:2502004) (PMID:2058577) (PMID: 7223699) (PMID:10958820) (PMID:12097660)
11) クロラムフェニコールとの同時摂取で鉄治療の反応が遅れることがある (103) (107) 。
12) フルオロキノロン系抗生物質やテトラサイクリン系抗生物質、ペニシラミン、レボチロキシン、ビスフォス酸、ミコフェノール酸モフェチルと併用するとそれらの吸収率を低下させるので、二時間以上間隔をあけて服用すること (ミコフェノール酸モフェチルの場合、4〜6時間前か2時間後に鉄を摂取) (101) (103) (106) (107) (PMID:1443969)
13) メチルドパと併用すると、メチルドパの吸収を妨げ、代謝を変えるので結果的に血圧が上昇する。使用は二時間以上あけること (107) (PMID:3356082)
14) 多量のカテキン (EGCG) やブドウ種子抽出物はヘム鉄 (PMID:20375262) 、非ヘム鉄 (PMID:18716164) の吸収を阻害する可能性がある。

動物他での
毒性試験

・ラットに種々の用量の乳酸鉄を含む食餌を3ヶ月間摂取させて毒性評価したところ、肝細胞、腎管上皮細胞、網内系マクロファージに過剰の鉄の集積が見られ、高用量の投与ではAST,ALT、クレアチニン、BUN値の僅かな上昇がみられ、細胞内に鉄沈着が認められた肝臓や腎臓では実質細胞の機能障害が示唆された (2000111156) 。

AHPAクラス分類
及び勧告

・参考文献中に記載なし (22) 。

総合評価

安全性

・経口摂取で適切に用いれば、健常人 (14歳以上) および妊娠中・授乳中でもおそらく安全である。しかし、過剰摂取により鉄沈着症、血色素、眼球鉄症、遺伝性ヘモクロマトーゼ、胃腸障害 (便秘・吐き気・嘔吐) を招く。

有効性

(注:下記の内容は、文献検索した有効性情報を抜粋したものであり、その内容を新たに評価したり保証したりしたものではありません。)
・鉄欠乏性の貧血及びエリスロポエチンと併用で、慢性腎不全や、化学療法を受けている患者の貧血の治療に経口摂取で有効と判断される。
・その他の鉄欠乏症に関わる症状の改善に経口摂取で有効性が示唆されている。

参考文献

(1) 最新栄養学 第7版 (建帛社) 木村修一ら 翻訳監修
(3) 日本人の食事摂取基準 (2015年版)
(4) 四訂 食品成分表 女子栄養大出版部 香川芳子 監修
(5) 栄養成分バイブル 主婦と生活社 中村丁次
(14) ミネラル・微量元素の栄養学 第一出版 鈴木継美ら 編
(53) The Health Benefits of Vitamins and Minerals ERNA(European Responsible Nutrition Alliance)K.H.bassler et al.
(55) Harper's Biochem 23th ed
(56) Textbook of Biochemistry by Delvin.
(66) Pharmacist’s Letter/Prescriber’s letter Natural Medicine Comprehensive Database(2006)
(101) Drug Interactions Facts. Facts and Comparisons Inc., St. Louis, MO. 1999.
(102) Food and Nutrition Board, Institute of Medicine. Dietary Reference Intakes for Vitamin A, Vitamin K, Arsenic, Boron, Chromium, Copper, Iodine, Iron, Manganese, Molybdenum, Nickel, Silicon, Vanadium, and Zinc. Washington, DC: National Academy Press, 2
(105) The Science and Practice of Pharmacy. 19th ed. Lippincott: Williams & Wilkins, 1996.
(106) Micromedex Healthcare Series. Englewood, CO: MICROMEDEX Inc.,
(107) Drug Interactions Analysis and Management. Vancouver, WA: Applied Therapeutics Inc., 1997 and updates.
(108) Dietary Reference Intakes (DRI's), Institute Med of Natl Acad Sci, 1997.
(109) 五訂 日本食品標準成分表分析マニュアルの解説  財団法人日本食品分析センター/編集
(PMID:2905759) Med Toxicol Adverse Drug Exp 1988;3:430-48.
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