妊娠中の食事とサプリメントについて

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妊婦の方に健康食品やサプリメントの利用についてアンケートを行った際、質問の多かった項目を取り上げ、回答をまとめました。
葉酸の摂り方についても解説していますので、妊娠期間中の食生活の参考にしてください。
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目次
I.妊娠中の食事について
Q1 1日の摂取目安量は?
Q2 間食はどれくらい摂ればよい?
Q3 不足しがちな栄養素は?
Q4 摂りすぎに注意が必要な栄養素は?
Q5 食べた方がよい食品、避けた方がよい食品は?
Q6 添加物は食べてはいけない?

II.妊娠中の葉酸摂取について
Q7 なぜ妊婦は葉酸を摂ったほうがよいの?
Q8 葉酸を摂った方がよい時期は?
Q9 葉酸はどのくらい摂ればよいの?
Q10 葉酸の摂り方は?
Q11 どんな製品を選べばよい?
Q12 葉酸以外にリスク低減ができる栄養素は?

III.妊娠中のサプリメント利用について
Q13 サプリメントは摂った方がよいの?
Q14 サプリメントは胎児にどんな影響があるの?
Q15 自己判断で摂ってよい?
※ここでは、カプセルや錠剤、粉末、顆粒、抽出エキスなど、通常の食品とは異なる形態をした食品 (医薬品ではないもの) をサプリメントと呼ぶことにします。
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I.妊娠中の食事について

Q1 1日の摂取目安量は?
A1 非妊娠時の適量目安 (2200 kcal前後) を基準に考えます (1) 。妊娠期は、母体のエネルギー増加に加えて、胎児の発育エネルギー量を確保する必要があるため (1) 、妊娠初期・中期・末期によって付加分(増やす分)があります (2) 。しかし、母体のもともとの体格や基礎代謝量、身体活動量などにより、体重変化は個人差が大きいものです (1) 。付加分だけでなく、妊娠前の体格を基準とした「推奨体重増加量」(1) も目安に取り入れましょう。数値にこだわるのではなく、「自分に合った量」を摂取し、体重をうまくコントロールすることが大切です。

【体格区分別 推奨体重増加量】(1)

非妊娠時のBMI (体格区分)※1)

妊娠中期から末期における、1週間あたりの推奨体重増加量

妊娠全期間を通しての推奨体重増加量

18.5未満 (低体重)

0.3〜0.5 kg/週

9〜12 kg

18.5〜25.0未満 (ふつう)

0.3〜0.5 kg/週

7〜12 kg※2)

25.0以上 (肥満)

個別対応

個別対応


※1)BMI=体重 (kg) /身長 (m)2
※2) BMIが18.5に近ければ12 kgのほう、BMIが25に近ければ7 kgのほうと考えます。
※妊娠初期については体重増加に関するデータが乏しいため、目安の提示がありませんが、つわりなどの状況を踏まえて個別対応となります。

具体的な食事量は妊産婦のための食事バランスガイド」(1)を参考にしてください。主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物、それぞれについて、どれくらい食べたらよいかがイラストで示されています。


各栄養素量については食事摂取基準 (2010年版) 」(2) に示されています。妊娠初期 (16週未満)・中期 (16〜28週未満)・末期 (28週以降) の区分ごとに、付加分が策定されています (付加分のない栄養素もあります) 。

Q2 間食はどれくらい摂ればよい?
A2 個人差が大きいので一概にはいえません。1日3回の食事で十分な量が確保できないとき等は間食を取り入れて補う必要がありますし、逆に体重が増えすぎたとき等には間食を制限する必要があります。妊娠中の体重管理については上記の「体格区分別 推奨体重増加量」がひとつの目安になりますが、医師や管理栄養士等の専門家に相談し、体重変化を確認しながら、適宜、食生活を見直すことが大切です (1) 。

Q3 不足しがちな栄養素は?
A3 妊娠中に不足しがちな栄養素は以下の3つがあげられますが、食事摂取基準で妊婦に付加量がある項目は、推定エネルギー必要量、たんぱく質、脂質 (n-6系脂肪酸) 、ビタミンA、D、B1、B2、B6、B12、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンC、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、セレンです。したがって「バランスのよい食事」をまず基本に置くようにし、不足しがちな栄養素を、基本にプラスするつもりで摂るようにしましょう。
葉酸・・・妊娠は葉酸の必要量が顕著に増大しますので (2) 、葉酸を多く含む食品 (10) を積極的に摂ることを心がけましょう。また、葉酸は胎児の神経管閉鎖障害に対してリスク低減が期待できる栄養素です (1) (2) (3) 。葉酸摂取によって、母体や胎児の赤血球の葉酸レベルを適正量に維持する (2) ことに加え、胎児のリスク低減分も考えた場合、摂り方には工夫が必要です。詳しいことはII.妊娠中の葉酸摂取についてで解説していますので参考にしてください。
・・・妊娠中の中期・末期には、妊娠前の倍量程度、摂る必要があります (10 mg前後⇒20 mg前後) (2) 。鉄分を多く含む食品を積極的に摂ることを心がけましょう。
カルシウム・・・食事摂取基準での妊婦付加分はありませんが、日本人女性の平均的カルシウム摂取量は約500 mg/日であり (4) 、食事摂取基準の推奨量650 mg (女性、18〜69歳) に届いていません。自分の食事を振り返り、必要ならばカルシウムを多く含む食品を参考にして、意識的に摂取するようにしましょう。

Q4 摂りすぎに注意が必要な栄養素は?
A4 妊婦はビタミンAの過剰摂取に注意してください。妊婦が妊娠初期にビタミンAを過剰に摂取すると、胎児に奇形を起こす可能性が高くなると報告されています (2) 。このことをふまえ、妊婦における健康障害非発現量は4,500μgRE/日とされていますが (2) 、日本人女性の平均的ビタミンA摂取量は751μgRE/日 (4) で、摂取量が4,500μgRE/日以上にもなるのは、サプリメント等の利用によるものと考えられます。サプリメント等は特定成分を精製・濃縮したもので、味も匂いも体積もないので「飽きる」「満腹になる」ことがなく、普通の食事に比べて特定成分を容易に過剰摂取しやすい形態です。とくに脂溶性ビタミン (A,D,E,Kの4種類) は過剰摂取すると体内に蓄積しますので、注意してください。食事摂取基準でのビタミンA耐容上限量 (女性、18歳以上) は2,700μgRE/日です。安易なサプリメントの利用は、長期間に渡る大量摂取につながることがあります。妊婦の場合は特に自己判断でサプリメント等を利用することは避けましょう。

Q5 食べた方がよい食品、避けた方がよい食品は?
A5 栄養素の面からは、食品として「食べたほうがよい/避けたほうがよい」というものは、ありません。個人の体調/体質によってはそういった食品があるかもしれませんが、全般的な良し悪しに対して明確な根拠をもつ食品はありません。逆に、「○○がよい」と聞いてそればかりを食べたり、「××はよくない」と聞いてそれを一口も食べない等の行動は、結果的に偏食となり、食事バランスが崩れることになります。食生活で最も大切なのはバランスであり、それは「多種類の食品をまんべんなく食べる」ということです。また、情報やアドバイス等をおおらかに受け止める気持ちも大切です。「絶対にこうしなければいけない」と思うのではなく、胎児と母体が安心して過ごすための情報のひとつ、くらいに受け止めましょう。

食中毒の点からは、以下のことに気をつけてください (5) 。
・リステリア菌・・・妊婦はリステリア菌に感染しやすくなるので、リステリア食中毒の原因食品を積極的に食べるのは避けましょう (厚生労働省パンフレット「食べ物について知っておいてほしいこと」) 。また、リステリア菌以外の食中毒全般にも気をつけましょう (厚生労働省パンフレット「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」) 。
・水銀・・・魚をよく食べる人は、水銀濃度の高い魚介類を大量に偏って食べないように気をつけましょう。魚を全く食べないのではなく、偏った食べ方を避けて、魚食のメリットを食事バランスに生かすようにしましょう(厚生労働省パンフレット「お魚について知っておいてほしいこと」) 。

Q6 添加物は食べてはいけない?
A6 食べて大丈夫です。食品添加物とは「食品の製造過程で、または食品の加工や保存の目的で食品に添加、混和などの方法によって使用するもの」(6) で、安全性が確保されているので、食べても大丈夫です。添加物の安全性は以下の手順に従って評価されます (7) 。



II.妊娠中の葉酸摂取について

Q7 なぜ妊婦は葉酸を摂ったほうがよいの?
A7 葉酸摂取によって、胎児の神経管閉鎖障害発症リスクを低減させることができると考えられているからです。胎児の神経管閉鎖障害とは、受胎後およそ28 日で閉鎖する神経管の形成異常で、臨床的には無脳症・二分脊椎・髄膜瘤などの異常を呈します (2) 。これに対し、受胎前後のプテロイルモノグルタミン酸 (葉酸) 摂取がリスク低減に有効であることが数多くの研究から明らかにされており、胎児の神経管の形成期に母体が十分な葉酸を摂取することが望ましいとされています (2) 。

Q8 葉酸を摂ったほうがよい時期は?
A8 妊娠の1か月以上前から妊娠3か月までです (4) 。リスク低減のためには母体が受胎前から十分な葉酸を摂取している必要があるので、「妊娠を計画している女性、または、妊娠の可能性がある女性」(2) に対し、付加的な葉酸の摂取が望まれています。胎児の神経管閉鎖のタイミングからすると「妊娠して又は妊娠の疑いを持って産婦人科の外来に訪れてからの対応では遅い」と考えられています (3) 。


Q9 葉酸はどのくらい摂ればよいの?
A9 妊娠の計画・可能性がある女性は、食事摂取基準の表に示されている量に、付加的に400μg/日のプテロイルモノグルタミン酸を摂ることが望ましいとされています (2) 。ただし、食事摂取基準の表に示されている量は「食事性葉酸」の量であり、脚注に表示されている「プテロイルモノグルタミン酸」は、添加物としての葉酸量をあらわしています。これは、食事性葉酸の相対生体利用率が約50%と考えられているため (2) 、仮に、生体内で葉酸が100必要だとしたら、葉酸を200含む食品(野菜や肉等)を食べましょう、というのが食事摂取基準の値です (食品からの葉酸は、食べた量の半分しか体内利用できないという意味であり、そのことが考慮された値が表に出ています) 。表の欄外にある「400μg/日のプテロイルモノグルタミン酸」は、食品中に存在する葉酸のことではないので、これを食事性葉酸に換算すると800μgになります (2) 。800μgもの葉酸を普通の野菜や肉からだけで摂取することは難しいため、食事に工夫が必要になります。「妊産婦のための食生活指針」 (厚生労働省) によれば「妊娠初期の人には、神経管閉鎖障害発症リスク低減のために、葉酸の栄養機能食品を利用することもすすめられます」とありますが (1) 、1日1 mg (=1000μg) は超えないようにとされていますので (3) 、摂取量に注意しましょう。たくさん摂れば摂るほど良いというものではありません。
<参考>
・H20年国民健康・栄養調査における日本人女性の平均野菜摂取量=275.9 g/日 (4)
・H20年国民健康・栄養調査における日本人女性の平均葉酸摂取量=0.294 mg/日 (4)
・1 mg=1000μg


Q10 葉酸の摂り方は?
A10 まず食事の充実、次に葉酸を添加した栄養機能食品や加工食品等の利用、どうしても足りなければサプリメント、という順番で考えてみましょう。
葉酸の摂取量を増やす目的で安易にサプリメントに手を伸ばす前に「Q14 サプリメントは胎児にどんな影響があるの?」をお読みください。サプリメントは品質も規格も一定でなく、混合物や含有成分なども様々で、成分同士の相互作用や過剰摂取などの可能性が否定できません。食事摂取基準での推奨量と妊婦付加分をまず食事で確保できるよう、バランスのよい献立に気をつけ、その上で、葉酸が添加された特別用途食品 (9) や栄養機能食品、加工食品等を上手に利用しましょう。
<参考>
葉酸の供給源となる食品例と葉酸含有量 (8)
葉酸を多く含む食品 (10)
葉酸の多い果物 (10)
葉酸を多く含むメニュー (8)


Q11 どんな製品を選べばよい?
A11 加工食品等は含有量や原材料などの表示がしっかりしているものを、サプリメント等は自己判断せずに医師や管理栄養士等に相談をしましょう。加工食品等は、摂取量がきちんと把握できる製品、原材料が明確な製品を選びましょう。「抽出物」「エキス」などの表示は、成分名及び含有量が不明な製品が少なくありません。また、成分名がはっきりしていても、葉酸以外の成分が複数添加されている製品もあるので、他の成分にも注意をしましょう。食品の形態ならば、ある程度の容積・香り・味等が存在するため「満足感」によって、食べすぎ (過剰摂取) を防ぐことができます。しかし、サプリメント等は精製・濃縮した成分を、体積・香り・味を感じることなく経口摂取できるので、容易に過剰摂取してしまう可能性があります。葉酸の摂取は、できるだけ普段の食事および加工食品など「食品本来の形状」をしているものから摂るようにし、どうしてもサプリメントを利用したい場合は、自己判断をせずに医師や管理栄養士に相談をしましょう。

Q12 葉酸以外にリスク低減ができる栄養素は?
A12 日本で胎児の障害リスクを低減できると考えられている栄養素は今のところ葉酸だけです。

<参考>
国立健康・栄養研究所 健康・栄養フォーラム>よくある質問 (FAQ) >栄養> 「2010年日本人の食事摂取基準における葉酸の摂取基準表の欄外1 (妊娠可能な女性の葉酸摂取について) 質問します。



III.妊娠中のサプリメント利用について

Q13 サプリメントは摂った方がよいの?
A13 安易なサプリメントの利用は控えたほうがよいでしょう。医薬品と違い、サプリメントは品質や規格などが一定しません。また、サプリメントの類は単一成分でなく複数成分が添加されている製品が多いため、成分同士の相互作用や過剰摂取などの問題もあります。栄養はできるだけ普通の食事から摂るように心がけ、どうしても食事から摂れない場合や、欠乏症などが疑われる場合は医師に相談しましょう。

Q14 サプリメントは胎児にどんな影響があるの?
A14 胎児にどんな影響があるか判断を下すためのデータが充分にないため、よく分かっていません。サプリメントや健康食品等を妊婦が摂取したらどのような影響があるかを確かめるためには、実際の妊婦に協力を得て臨床試験を行うことが必要です。しかし倫理的な問題から妊婦を臨床試験の対象にすることはできません。そのため、妊婦や胎児については研究データが少なく、有効性 (効果の有無) や安全性 (安全か危険か) が明らかではありません。安全性が不明なものを妊婦が積極的に摂ることは、避けたほうがよいと考えるべきでしょう。

Q15 自己判断で摂ってよい?
A15 妊婦が自己判断でサプリメント等を摂取することは控えましょう。食事や栄養について悩み、心配、不安等があれば、かかりつけの医師や病院の管理栄養士などに相談をしましょう。



参考文献

(1) 妊産婦のための食生活指針 ―「健やか親子21」推進検討会報告書―
(2) 日本人の食事摂取基準(2010年版)
(3) 「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について」
(4) 平成20年国民健康・栄養調査結果の概要について
(5) 妊婦の方への情報提供「これからママになるあなたへ」(厚生労働省)
(6) 食品衛生法
(7) 厚生労働省WEBサイト>食品添加物>添加物に関する規制の概要
(8) 国立健康・栄養研究所「「健康食品」の安全性・有効性情報」
(9) 国立健康・栄養研究所「特別用途食品・栄養療法エビデンス情報」
(10) 国立保健医療科学院>研究部センター>生涯保健部>葉酸情報のページ