特定保健用食品 (通称:トクホ) の上手な利用法 (Ver.160302)

画面を閉じる

 

 

発信者

構築グループ

本文

消費者の健康志向の高まりを受け、店頭などでは「健康に良い」とうたう様々な食品が販売され、その市場は拡大の一途をたどっています。こうした状況の中、消費者が製品の効果を過度に期待したり、不適切な利用により健康被害を受ける事例も少なくありません。
 そこで、「いわゆる健康食品」の問題点や、「特定保健用食品 (通称:トクホ)」の上手な利用法についてまとめました。ちなみに、「健康食品」=いわゆる健康食品+保健機能食品(特定保健用食品+栄養機能食品)と考えられています。[注:文中の () 内の数字は末尾に示した参考文献に対応しています。]

●/////●/////●/////●////●/////●/////●/////●/////●////●////●////●////●
目次 
(1)「いわゆる健康食品」について
 I.安全性に関する問題
 II.有効性に関する問題
 III.利用する側の問題

(2) 特定保健用食品 (トクホ) について
 I.特徴
 II.効果的な利用法 (利用する時の参考としてください)
  1.「お腹の調子を整える食品」
  2.「コレステロールが高めの方に適する食品」
  3.「食後の血糖値の上昇を緩やかにする食品」
  4.「血圧が高めの方に適する食品」
  5.「食後の中性脂肪が上昇しにくい、または体脂肪がつきにくい食品」
  6.「骨の健康維持に役立つ食品」
 III.利用上の注意
  1. 利用対象者を確認する
  2. イメージだけで選ばない
  3. 誤った認識で利用しない
  4. 過剰摂取に注意する
 IV.専門家のアドバイスを受ける
 V.トクホの動向
●/////●/////●/////●////●/////●/////●/////●/////●////●////●////●////●

(1)「いわゆる健康食品」について

I.安全性に関する問題

  製品を選ぶ際に最も重要なのは、その製品の安全性です。健康のために良かれと口にしたもので健康被害を受けては本末転倒。
 「いわゆる健康食品 (保健機能食品以外のもの)」は、あくまでも食品なので、一般の農産物や生鮮食品等と同じように、安全性を確認する各種試験の実施や、製造・販売について厚生労働省の許可を受けることは義務付けられていません。中には独自の試験を実施した製品もありますが、ほとんどは安全性や有効性に関する科学的な根拠が不明なまま販売され、起こりうる悪影響なども明確にされていません (1) 。そのため行政機関が行う収去検査 (実際に販売されている製品を検査すること) などの検査項目に該当しない限り、健康被害が起きるまで検査されないものがほとんどです。
 食品に医薬品成分を添加することは医薬品医療機器等法で禁止されているにもかかわらず、「いわゆる健康食品」として販売されている製品の中には、医薬品成分を含み重大な健康被害を起こしたものもあります。こういった違法な製品は、行政的に無承認無許可医薬品とされますが、買い上げ調査や、実際に健康被害が起きたあとで検査をして初めて、違法な成分 (原材料の表示に記載されていない) が含まれていることが明らかになります (2) 。
  また、カプセルや錠剤の形状をしている食品も、利用の際には特に注意が必要です。なぜなら、カプセルや錠剤は一般的な食品に比べて特定成分を過剰に摂取しやすく、健康被害を受ける量まで簡単に摂ってしまうおそれがあるためです。含まれている成分が、たとえ日常的に食する食材に含まれる成分と同じものであっても、特定成分のみを精製・凝縮した食品を利用する場合は、その摂取量に注意しなくてはなりません (1) 。

II.有効性に関する問題

  健康食品の多くはイメージ先行で販売されています。有効性の確認試験が義務付けられていない「いわゆる健康食品」の場合は、うたわれている有効性に科学的根拠があるかどうかは不明です。
 広告やインターネットなどで利用者の談話が記載されているものがありますが、これらはあくまでも「個人の体験談」であって、科学的な有効性を証明するものではありません。「いわゆる健康食品」の利用と平行して医薬品を服用したり、生活習慣の改善を試みたりするケースもあり、説明されている効果がすべて「いわゆる健康食品」によって得られたものかどうかは判断できません (1)(2) 。
 また、「いわゆる健康食品」に添加された素材 (あるいは成分) は、産地や収穫された季節、製造工程などの影響で品質が左右されます。そのため、仮にその素材 (あるいは成分) の有効性情報があったとしても、その情報をそのまま製品に直接当てはめることはできません。製品に添加された素材 (あるいは成分) の純度や、有害物質の混入の有無等により、製品の有効性は変わります。「素材情報」と「製品情報」は必ずしも一致しないことに留意してください (1) 。
 ちなみに、特定保健用食品は素材だけでなく、最終製品でもその有効性と安全性が評価されているという特徴がありますので、消費者が安心して利用できる製品といえます。また、医薬品の場合は、「いわゆる健康食品」と違って品質管理基準があるため、純度や含有量 (濃度) が常に一定のものが製造・管理・販売されています。ここが食品と医薬品の大きな違いです。

III.利用する側の問題

  病気の治療・治癒を目的にした健康食品の利用は間違っています。なぜなら、ある疾病にかかっている人が、自己判断で安易に「いわゆる健康食品」を利用すると、科学的根拠に基づいた適切な治療を受ける機会を失ったり、現在行われている治療の妨げになったりして、思わぬ健康被害を受けることになるからです。
 「いわゆる健康食品」は、「○○病が治る」や「△△に効く」などの医薬品的な効能をうたうことは医薬品医療機器等法により禁止されていますが、多くの製品が魅力的なキャッチフレーズで販売されています。その表現に魅かれ、有害性を考えずに利用したり、製品に対して医薬品的な効能を求める消費者も少なくないようです。しかし、「いわゆる健康食品」で病気の治療・治癒はできない、と考えておくのが妥当でしょう。治療が必要な人や現在治療中の人が、そのような製品を利用する場合には、適切な疾病治療の妨げにならぬよう、必ず主治医に相談するか、あるいは利用していることを伝えましょう。
 さらに、「いわゆる健康食品」の中には、病気や健康、美容といった消費者の関心や弱点に付け込む悪徳な商法や商品もあります。購入や利用に当たっては、専門家のアドバイスを取り入れながら、その必要性を冷静に判断してください (1)(2) 。

(2) 特定保健用食品 (トクホ) について

I.特徴

 上記のような「いわゆる健康食品」の問題点を改善したものが特定保健用食品 (通称:トクホ) で、「いわゆる健康食品」とは以下の点が異なります (4) 。
・食品表示法により定義されている。
・国が製品として有効性や安全性を評価し承認している。
素材だけでなく、最終製品でもその有効性と安全性が評価されているため、消費者が安心して利用できる製品といえる。
・通常の食品には認められていない特定の保健の用途*1の表示ができる。
・製品に付けられている「許可証票 (右図) 」により国が審査・許可していることが明確にわかる。

*1保健の用途の表示: 健康の維持・増進に役立つ、または適する旨の表現 (注:医薬品のような病気の治療や治癒に対する効果の表現は認められていません) 。

 平成28年3月2日現在、1,237品目がトクホとしての表示の許可を受けています (4) 。
 
 トクホは平成3年に創設・制度化されました。当時は医薬品と区別をするため、明らかな食品の形態をしていることが必須要件でした (1) が、平成13年に保健機能食品制度が創設された際、錠剤やカプセル状でも許可されることになりました。平成17年には制度の見直しが行われ、条件付きトクホ、規格基準型トクホも新設され、限定的ですが疾病リスク低減表示も認められるようになっています (4) 。

II.効果的な利用法(利用する時の参考としてください)

  トクホは「いわゆる健康食品」と違い、国が製品として有効性や安全性を評価し、承認した製品です。しかし、その名前が示すとおり、あくまでも「食品の一種」です。
 食生活の乱れや、食事内容の不安の解消を目的としてトクホを利用しても、期待する効果は得られません。トクホは現在の食生活を改善するきっかけとして、適切に利用することにより、一定の効果が得られるものといえます。
 トクホに「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」という文言の表示が義務付けられているように、まずは日常の食生活を見直すことが大切です(基本的事項)。バランスのとれた食事の中で表示通りに正しくトクホを利用することで、より一層の効果が期待できます (1)(4) 。
 バランスの良い食事、望ましい食生活については、食事バランスガイドや食生活指針を参考にしてください (2)(3)(6) 。
 以下に代表的なトクホの利用における"基本的事項"と"効果的な利用方法"をまとめました。


1.「お腹の調子を整える食品」

トクホを利用する前に心がけましょう(基本的事項)

 便秘の改善など、お腹の調子を整えるためには、以下の生活習慣が大切です (7) 。
 ゝ則正しい食生活
 ⊃物繊維を多く含む食品*2や乳製品、水分の適度な摂取
 E度な運動と休養
 *2食物繊維を多く含む食品・・・野菜(特に根菜類)、豆類、海藻類、キノコ類など
食物繊維を多く含む製品を使ったメニューはこちらをご参照ください。

トクホの特徴と利用上の注意 (効果的な利用方法)

 トクホには、製品ごとに標準的な摂取量や摂取方法が記載されています。しかし、人によっては推奨される摂取量以下でも、関与成分によりお腹がゆるくなる等、体調に好ましくない変化を来たすこともあるので、体調を見ながら利用しましょう。
 また、製品によってはエネルギー量が高いものもあり、エネルギーの摂り過ぎにつながる可能性もありますので、関与成分の効果ばかりに目を奪われるのではなく、製品全体の特徴を考慮して利用することが大切です (8)(9)(10)。
 関与成分には、オリゴ糖類 (フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ラクチュロース、コーヒー豆マンノオリゴ糖など) 、乳酸菌・ビフィズス菌類、食物繊維類 (難消化性デキストリン、グアガム、サイリウム種皮、小麦ふすま) などがあります。

2.「コレステロールが高めの方に適する食品」

トクホを利用する前に心がけましょう (基本的事項)

 コレステロール値が高い人は、以下の生活習慣に気をつけましょう (7)(11) 。
 .灰譽好謄蹇璽襪鯊燭含む食品 (卵黄・魚卵などの卵類、内臓類など) を控える
 ∋號辰梁燭た品を控える
 食物繊維を十分に摂取する
 ただし、コレステロールは低い程良いというものではありません。基準値*3 (12) も参考にしましょう。
*3血清脂質の基準値

LDL-コレステロール

70〜140mg/dL

HDL-コレステロール

男性:40〜70 mg/dL

女性:45〜75 mg/dL

トリグリセリド(TG)

30〜150 mg/dL


 食物繊維・不飽和脂肪酸を多く含む食品を使ったメニューはこちらをご参照ください。



トクホの特徴と利用上の注意 (効果的な利用方法)

 このトクホの有効性を確認した試験では、コレステロール値が正常よりも高く、脂質の摂取量も平均より多い人が、トクホを一定量連続して摂取した結果、コレステロール値を下げる効果が得られています。しかし、実際の食生活の中で毎日連続して同じ食品 (特にマヨネーズやマーガリンなど) を食べ続けることは考えにくく、また、トクホの種類 (油脂類) によってはコレステロール値の低下と引き換えにエネルギーを摂り過ぎてしまう可能性も否定できません (13) (14) (15) 。
 毎日の食事内容を見直した上で、従来の製品に置き換えてトクホを適量利用すれば、期待する効果が得られると考えられます。
 関与成分には、大豆たんぱく質、キトサン、低分子化アルギン酸ナトリウム、リン脂質結合ペプチド、サイリウム種皮食物繊維、植物ステロールなどがあります。

3.「食後の血糖値の上昇を緩やかにする食品」

トクホを利用する前に心がけましょう (基本的事項)

 血糖値を上げにくい食生活を心がけましょう (7) 。
 ‥質の摂りすぎに気をつける
 ⊃物繊維の多い食品を積極的に取り入れる
 GI*4 (グライセミック・インデックス) の低い食品を効果的に利用する
 *4 GI (グライセミック・インデックス)・・・グリセミック指数とも呼ばれ、炭水化物が血糖値を上昇させる速度を示します。数字が大きい食品ほど血糖値を急速に上昇させ、数字が小さい食品は緩やかに上昇させます。蜂蜜や一般的なパン、白米、コーンフレークなどはGIが高く、大豆や大麦などは低いとされています。しかし、GIが低くてもエネルギーが低いわけではありませんので、食べ過ぎればエネルギーの過剰摂取につながります (4) (11) 。
低GI食品を使ったメニューはこちらをご参照ください。

トクホの特徴と利用上の注意 (効果的な利用方法)

 このトクホの有効性を確認した試験では、一般に糖質と同時に摂取することを条件としています。そのため、糖質と同時に摂取した際には血糖値上昇の抑制効果を期待できますが、トクホの単独摂取では関与成分がもたらす血糖上昇抑制効果は期待できません。また、血糖値の上がりやすい人が糖質を摂取する際に、これらのトクホを利用すると期待する効果が得られるという結果は出ていますが、トクホを利用しただけでは血糖値の上昇を完全に抑えることはできません (17) (18) (19) 。血糖値を上げにくい食生活や運動習慣を心がけた上でこれらのトクホを利用すれば、さらなる効果が期待できるでしょう。
 関与成分には、難消化性デキストリン、豆鼓エキス、グァバ茶ポリフェノール、小麦アルブミン、L-アラビノースなどがあります。

4.「血圧が高めの方に適する食品」

トクホを利用する前に心がけましょう (基本的事項)

高血圧の原因としては遺伝的要因もありますが、トクホを利用する前に以下の点を心がけましょう (11) 。
  ̄分摂取を控える
 ▲灰譽好謄蹇璽襪篁號辰寮歇茲鮃気┐
 アルコールを控える
 ぅリウムを多く含む野菜や果物を摂取する
 ヅ正体重の維持
 ε度な運動
 Ф惘
塩分を控えたメニューはこちらをご参照ください。

トクホの特徴と利用上の注意 (効果的な利用方法)

 このトクホの有効性を確認する試験では、二次性高血圧 (他の病気が原因で起こる高血圧) の人は除外し、正常よりも血圧が高い人を対象としています (20)(21)(22)(23) 。
 日常生活の中で上記のような点を心がけることで、血圧の低下が期待できます。そのうえで補助的にトクホを利用すると、より効果が得られると考えられます。
 関与成分には、ラクトトリペプチド、かつお節オリゴペプチド、イソロイシルチロシン、サーディンペプチド、カゼインドデカペプチド、わかめペプチド、杜仲葉配糖体 (ゲニポシド酸) 、γ-アミノ酪酸 (ギャバ) 、酢酸などがあります。

5.「食後の中性脂肪が上昇しにくい、または体脂肪がつきにくい食品」

トクホを利用する前に心がけましょう (基本的事項)

 このトクホの中では調理油類に関心が集まっていますが、トクホだからといっても利用する量が多ければ、エネルギーの摂り過ぎにつながります。まずは食事内容を見直して脂質の摂取量を抑え、適切な栄養バランスを心がけましょう。
食物繊維・不飽和脂肪酸が多く含まれる食品を使ったメニューはこちらをご参照ください。

トクホの特徴と利用上の注意 (効果的な利用方法)

 このトクホの有効性を確認する試験では、一般にトクホを含めた脂肪摂取量を同年代の平均以下に制限した上で、一般的な製品とトクホを置き換えて結果を得ています。ある試験では、試験期間中の食事は全て栄養士が用意し、適度な運動を取り入れながら、トクホの調理油を摂取させ、同量の一般の調理油を摂取したときと比較しています。つまりバランスの取れた食生活と運動の実施をした条件で試験が行われたことがわかります。トクホであってもその製品を食べさえすれば全ての人で効果が得られるわけではないのです (5)(24) 。
 脂質の摂取量を控えた上で従来の製品に置き換えてトクホを適量利用すれば、関与成分にもとづいた期待できる効果が得られると考えられます。
 関与成分には、ジアシルグリセロール、茶カテキン、グロビンたんぱく分解物、IPA (イコサペンタエン酸) 、DHA (ドコサヘキサエン酸) などがあります。

6.「骨の健康維持に役立つ食品」

トクホを利用する前に心がけましょう (基本的事項)

 骨の健康に大切なカルシウムは、摂取が難しいミネラルです。平成25年国民健康・栄養調査の結果 (25) によれば、20歳以上の男女とも、食事摂取基準 (26) の推奨量に届いていません。
閉経を迎える50代以上の女性については、40代までよりも摂取量が高くなっており、骨粗しょう症予防を意識してか、積極的にカルシウム摂取を心がけている様子がうかがえますが、骨の健康を維持するには、カルシウムの摂取だけでは不十分で、以下のようなことすべてが大切です (11)(27) 。
 .ルシウムの十分な摂取
 ▲咼織潺D、ビタミンKの十分な摂取
 F光に当たる時間を確保する
 づ度な運動負荷をかける(骨量増加のために重要)
 骨の健康は一朝一夕では得られません。若年期からの食生活や運動が将来の骨量に影響することを意識して、骨の健康維持・増進に努めましょう (27) 。
カルシウムが多く含まれる食品を使ったメニューはこちらをご参照ください。


トクホの特徴と利用上の注意 (効果的な利用方法)

 このトクホには、骨の形成に必要なビタミンKを多く含む製品や、骨からのカルシウム溶出を抑制する成分を含む製品などがあります (28)(29) 。
 カルシウムやビタミンD、ビタミンKの十分な摂取と適度な運動に加え、このようなトクホを併用すると、より骨量減少や骨粗しょう症のリスクを回避できると考えられます。
 特に骨の健康に支障を来たしやすい高齢者では、食事量そのものが少なく、摂取できる栄養量も少なくなりがちです (11) 。食事や運動に併せて上手にトクホを利用しましょう。
 関与成分には、ビタミンK、大豆イソフラボン、MBP (乳塩基性たんぱく質) などがあります。

III.利用上の注意

1.利用対象者を確認する
 トクホは医薬品ではありません。トクホの効果に過度な期待をしたり、医薬品的な効能を求めたりすると、病気を悪化させたり、適切な治療を受ける機会を失う場合があります (1) 。
 トクホは健康が気になり始めた人や、普段の食生活に不安を感じている人など、「病気ではない人」を対象として設計されています。専門職のアドバイスを受けた上で利用するならば、病気の人が利用しても差し支えない製品もあるでしょうが、誰を対象として設計された食品であるかを認識しておくことが、トクホの正しい利用法につながります。

2.イメージだけで選ばない

  消費者の健康に対する関心が高まるとともに、トクホが注目されるようになってきました。確かに、トクホは他の「いわゆる健康食品」と呼ばれる製品に比べて優れたものと考えられます。しかし、いくら優れた製品であっても、その利用方法が適切でなければ製品に表示されている効果を期待できないばかりか、望ましい生活習慣の障害になることもあります。
 一般に、「トクホは国が認めている」という事実と、期待される効能のみがクローズアップされ、その効果的な利用法や利用上の注意などが認識されにくい状況になっています。そのため、「トクホは国のお墨付きだから」と絶対の安心感を持ってしまう消費者が度々見受けられます。しかし「特定保健用食品」という名前の通り、トクホも「食品」の一つです。トクホの位置づけとしては、「消費者にとって、製品を選ぶときの判断材料 (科学的根拠に基づく情報) が、明確に表示されているもの」と考えるのが妥当です。トクホさえ利用していれば絶対安心 (健康になれる)、というものではありません。

3.誤った認識で利用しない

 例えば、トクホの中で「体脂肪がつきにくい油」が人気を集めていますが、食べれば食べるほど体脂肪がつきにくくなるわけではありません。この油の有効性を確認した研究では、食事制限をした条件で、通常の油と「体脂肪がつきにくい油」を置き換えて比較しています (5) 。つまり、食生活の改善をしなければトクホの効果は得られないのです。このように、トクホが持つ効能を最大限に引き出すためには、まず、正しい食生活の実践が必要です。
 上記は一例ですが、トクホに対して同じような誤解や過度の期待を持つ消費者が少なくないようです。平成17年に行われた保健機能食品制度の見直しでは、「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを」という文言をトクホの容器包装の前面に表示することが義務付けられました。これは消費者の誤った利用や、過度の期待を是正するためと考えられます。

4.過剰摂取に注意する

  トクホには科学的根拠に基づいた期待できる効果があります。効果がある、ということは逆に、摂りすぎた場合には、望まない作用を起こす可能性があることも意味します。
 例えば、「お腹の調子を整える食品」を一度に大量に摂るとお腹がゆるくなる可能性があります。しかし、このような注意点は製品の「利用上の注意」などに必ず記載してあります。トクホはたくさん摂ったからといって大きな効果が得られるものではありません。利用する際は、必ず記載されている注意事項などを読み、摂取量や摂取方法に注意しましょう。また、現在では錠剤やカプセルもトクホとして許可を受けていますが、これらは通常の形態の食品よりも、精製・濃縮した成分を簡単に摂取できるので、過剰摂取しないよう注意が必要です (1) 。
 また、期待できる効果が異なるトクホでも、記載事項を注意深く見ると、同じ成分が含まれているものがあります。例えば、「お腹の調子を整える食品」と「血糖値が気になり始めた方への食品」は、期待する効果は違いますが、どちらにも「難消化性デキストリン」を関与成分として含む商品があります。関与成分が同じトクホを同時に利用した場合、摂取量によっては、結果的に1種類のトクホを過剰摂取したことになります (1) 。

IV.専門家のアドバイスを受ける

 「いわゆる健康食品」やトクホに関する問題の背景には、消費者の過度の期待や誤解もありますが、消費者がこれらの食品を適切かつ効果的に利用できる環境が整えられていないことも原因として挙げられます。健康食品を効果的に利用するためには、消費者が正しい認識を持ち、各々が状況に応じて必要な食品を選ぶことが大切です。
 今日では、様々な情報が玉石混淆の状態で溢れていますので、消費者自らが正しい情報を選択することは困難です。そこで、健康食品が持つ成分やその機能、個人にとっての必要性、使用目的、使用方法等について理解し、正しく情報を提供できる管理栄養士や薬剤師、医師などの専門職の役割が重要になってきています。国も昨今の状況を受け、アドバイザリースタッフ (消費者に適切に情報を提供し、消費者が気軽に相談できる者) に関する通知を出し、専門職の養成を推奨しています (1) 。自己判断のみで購入・利用せず、こうした専門家のアドバイスを参考にされることをおすすめします。

V.トクホの動向

  財)日本健康・栄養食品協会が2011年11月から12月にかけて行ったアンケート調査によると、2011年度のトクホの市場規模は5,175億円 (メーカー希望小売価格ベース) と推定され、2009年度に比べ6%減少しました。カテゴリー別では2009年度の調査に比べ、「歯の健康に役立つ食品」が64%と大きく減少し、「中性脂肪が上昇しにくいまたは体脂肪がつきにくい食品」が104%、「コレステロールが高めの方に適する食品」が106%、「血圧が高めの方に適する食品」が118%と伸びを示していました (30) 。
 これは、長引く景気の低迷や、トクホの担当省庁の移行、トクホの安全性に関連した新たな知見に関するニュースなどの影響を受けつつも、消費者が健康管理のためにトクホの効果に大きな期待を寄せていることの現われと考えられます。2008年4月から始まったメタボリックシンドローム (内臓脂肪症候群) に着目した特定健康診査・特定保健指導や、高齢者人口の増加の影響により、今後もさらに多くの消費者が健康状態の改善や健康の維持・増進のためにトクホを利用することが考えられます (2) 。
 トクホは有効性や安全性について厳しい審査を受け、国に認められた食品ですが、トクホの利用だけでは十分な健康は手に入れられません。バランスのとれた食事や運動、休養など、基本的な生活習慣を整えた上で、上手にトクホを取り入れましょう。トクホは、「これまでの生活習慣を改善するきっかけとして利用する」、という考え方が適切でしょう。

(Ver.160302)



参考文献

(1) 健康・栄養食品アドバイザリースタッフテキストブック
(2) 厚生労働省ホームページ
(3) 農林水産省ホームページ
(4) 消費者庁ホームページ
(5) The Journal of Nutrition:131,2853-2859,(2001)
(6) 文部科学省ホームページ
(7) 栄養食事療法必携:医歯薬出版
(8) 健康・栄養食品研究:2(2),43-51,(1999)
(9) 健康・栄養食品研究:3(4),63-72,(2000)
(10) 健康・栄養食品研究:4(4),21-27,(2001)
(11) エッセンシャル臨床栄養学:医学書院
(12) 臨床検査データブック LAB DATA2011-2012:医学書院
(13) 健康・栄養食品研究:6(1),21-35,(2003)
(14) 健康・栄養食品研究:3(4),13-22,(2000)
(15) 健康・栄養食品研究:2(1),27-36,(1999)
(16) メルクマニュアル:日経BP社
(17) 健康・栄養食品研究:5(2),31-39,(2002)
(18) 健康・栄養食品研究:3(2),19-27,(2000)
(19) 健康・栄養食品研究:4(3),81-88,(2001)
(20) 健康・栄養食品研究:7(1),123-137,(2004)
(21) 健康・栄養食品研究:5(3),67-81,(2002)
(22) 健康・栄養食品研究:9(1),1-14,(2006)
(23) 健康・栄養食品研究:6(1),51-68,(2003)
(24) Asia Pasific J Clin Nutr:12(2),151-160,(2003)
(25) 平成25年 国民健康・栄養調査報告
(26) 日本人の食事摂取基準(2015年版):第一出版
(27) 臨床病態栄養学:文光堂
(28) 健康・栄養食品研究:3(4),1-12,(2000)
(29) 健康・栄養食品研究:3(2),53-62,(2000)
(30) (財)日本健康・栄養食品協会ホームページ